多聞院 (世田谷区)

多聞院について

多聞院（たもんいん）は、東京都世田谷区北烏山に位置する真言宗豊山派の寺院です。正式名称は「金剛山 悲願寺 多聞院」であり、創建は1615年にさかのぼります。その当初の場所は現在の新宿区西新宿1丁目付近にあたる旧地で、甲州街道に面した大きな寺院でした。

歴史的背景

多聞院の創設者は、旧地の角筈村の村名主であった渡辺与兵衛と言われています。江戸時代には護国寺の末寺として「新義真言宗」に属しており、本尊には地蔵菩薩が安置されていました。しかし、歴史の波に抗えず、1945年5月の大空襲によって本堂を始めとするすべての建物と文化財が焼失してしまいました。

その後、1949年には東京都の区画整理事業に伴い、まず墓地を現在地の烏山に移したのち、1954年に本堂と庫裏が再建されました。多聞院は、烏山寺町を形成する26の寺院の中で最後に烏山に移転してきた存在でもあります。

境内の特徴

多聞院の境内には、さまざまな文化財や彫像があります。特に目を引くのは、石造涅槃図で、高さ2メートル、横3メートルにも及ぶ巨大なものです。この作品は、壷阪寺から贈られたもので、多聞院の歴代住職の関係によるものとされています。

左手に広がる墓地には、供養塔や歴史的人物の墓所があります。中でも「五百六十八人無縁墓」は、1837年に発生した大飢饉で亡くなった568名を供養するために建立されたものです。さらに、幕末の志士である大久保鼎の墓もここに存在し、その子孫が墓守をしていると言われています。

文化財の調査

1978年から1979年にかけて「世田谷区社寺調査」が行われ、多聞院では数多くの彫像が調査されました。中でも地蔵菩薩立像は、多聞院の本尊で、江戸時代の作品です。この像は、戦後の焼失を乗り越え、仮本堂で本尊として安置されていました。

その他にも、阿弥陀如来立像や不動明王立像、弘法大師坐像、千手観音菩薩立像、毘沙門天立像などがあり、これらの彫像も戦後に移座されたものです。特に、阿弥陀如来立像は76.6センチメートルの高さがあり、肉髻珠や白毫が水晶製とされ、魅力的な造りとなっています。

アクセス情報

多聞院へのアクセスは、京王線の千歳烏山駅から徒歩約15分、または千歳烏山駅から出ている関東バスの「久我山病院」行きを利用し、「寺院通2番」で下車、徒歩約1分と非常に便利です。

結論

多聞院は、長い歴史を持つ寺院であり、さまざまな文化財や彫像が存在する点が特徴です。地域の歴史と文化を感じられるこの寺院は、訪れる価値がある名所となっています。

もう一度検索