多胡碑

多胡碑（たごひ）

多胡碑は、群馬県高崎市吉井町池に位置する古代の石碑であり、711年（和銅4年）頃に多胡郡の建郡を記念して建立されました。この石碑は、日本の古代史を語る上で非常に重要な史料であり、以下のような特徴を持っています。

概要

多胡碑は、碑身、笠石、台石から構成されており、地元の牛伏砂岩を用いて作られています。全体の高さは約152.5cmで、碑身には6行80文字が刻まれています。碑文の内容は、上野国の三つの郡から300戸を分け、多胡郡を新設したことを伝えるもので、『続日本紀』の記述とも一致しています。

この形式の碑は中国ではほとんど見られず、日本国内でも数例しか確認されていません。特に、那須国造碑との関連性が指摘されており、多胡碑の形式は、高句麗と新羅の石碑の特徴を受け継いだ可能性が指摘されています。

笠石と台石は、過去に変遷があったことが知られています。近年行われた保存修理では、笠石の亀裂が修復され、笠石の向きが本来の正しい向きに修正されました。

通常は覆屋のガラス越しに見学できますが、碑文に記された日付にちなんで「多胡碑まつり」が開催される日には、扉が開かれ直接見学することができます。

碑文とその解釈

碑文には、多胡郡設置の経緯や関係者の名前が記されています。特に、「給羊」という言葉の解釈については、人名説、方位説、動物説など、様々な説が存在し、研究者の間で議論が続いています。

歴史

多胡碑が再び歴史に登場するのは、建立から約700年後の室町時代です。江戸時代には、多くの学者や文化人が多胡碑を取り上げ、その価値が広く知られるようになりました。明治時代には、初代群馬県令の楫取素彦が保護の重要性を訴え、政府による買い上げが行われました。第二次世界大戦中には、戦火を避けるために一時的に埋められましたが、戦後に元の場所に戻されました。近年では、多胡碑周辺の発掘調査が進められ、郡衙の遺構が発見されています。

書道史上の価値

多胡碑は、書道史においても高い価値を持っています。江戸時代に拓本が作成され、全国に紹介されたことで、多くの書家や文化人が多胡碑を訪れるようになりました。碑文の書風は、中国南北朝時代の摩崖碑に通じると言われ、その筆致は力強く、おおらかです。

周辺施設

多胡碑の周辺には、多胡碑記念館や吉井いしぶみの里公園などの施設があり、多胡碑に関する資料や考古資料を見学することができます。また、公園内には古墳や古代ハスの池などがあり、歴史と自然に触れることができます。

まとめ

多胡碑は、古代日本の地方政治や文化、国際交流を知る上で貴重な史料であり、その保存と研究は、日本の歴史を深く理解するために不可欠です。

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