夜遊びの帝王

夜遊びの帝王

1970年に公開された東映製作の映画『夜遊びの帝王』は、梅宮辰夫主演による「帝王シリーズ」の第一作として位置づけられています。この作品は、単なる娯楽映画にとどまらず、当時の社会背景や人々の欲望、そして男性の生き様を色濃く反映した作品として、今もなお多くの映画ファンに語り継がれています。

概要

「夜遊びの帝王」は、梅宮辰夫演じる主人公が、夜の世界でのし上がっていく姿を描いた作品です。梅宮辰夫と山城新伍のコンビは、この作品から始まり、シリーズを通してその掛け合いが人気を博しました。当初は、純愛色の強い作品として企画されましたが、シリーズが進むにつれて、より過激で破天荒な展開へと変化していきました。

「帝王シリーズ」は、全5作品で構成されており、一貫して梅宮辰夫が主演を務めています。このシリーズは、主人公が九州の炭鉱町から上京し、少年院時代に知り合った相棒と共に、夜の街を舞台に女性を騙して金を稼ぎ、成り上がっていくという共通のテーマを持っています。舞台は銀座や大阪へと変わることもありますが、その根底にあるのは、人間の欲望や野心、そして友情といった普遍的なテーマです。

キャスト

• - 松原浩：梅宮辰夫
• - 金山政雄：山城新伍
• - 大場艶子：富士真奈美
• - 田中じゅん子：永原和子
• - 信男：小林稔侍
• - 安岡：須賀不二男
• - 奥山：内田良平
• - 横田：諸角啓二郎
• - 千代：南風夕子
• - 幾代：山本マミ
• - 雪子：相川圭子
• - 朱実：沢知美
• - 早苗：賀川雪絵
• - 友子：渋沢詩子
• - 珠子：三原葉子
• - お清：久里千春
• - 良江：三島ゆり子
• - 吉川：中島信義
• - イサム：須賀良
• - 葬儀屋：上田吉二郎
• - 重役：金子信雄
• - 平山：河合絃司
• - 薬局店主：由利徹
• - かみさん：小桜京子
• - クラブの客：待田京介

豪華なキャストが、それぞれの役を魅力的に演じ、物語を彩っています。特に、梅宮辰夫と山城新伍のコンビは、観客を惹きつける大きな要素でした。また、女性キャストも、それぞれの個性を発揮し、作品に華を添えています。

スタッフ

• - 監督：斎藤武市
• - 脚本：小野竜之助
• - 企画：吉野誠一・矢部恒
• - 撮影：星島一郎
• - 美術：北川弘
• - 音楽：小杉太一郎
• - 主題歌：梅宮辰夫「シンボルロック」
• - 録音：小松忠之
• - 照明：川崎保之丞
• - 編集：田中修

監督の斎藤武市は、松竹から日活を経て東映に移籍後、本作が初の監督作品となりました。脚本の小野竜之助は、シリーズを通して脚本を担当しています。主題歌は、梅宮辰夫自身が歌う「シンボルロック」が使用されており、この曲は後に放送禁止歌となるほど、その内容が過激でした。

製作の背景

斎藤武市監督は、小津安二郎監督の作品にも携わった経験を持ち、その確かな演出力で知られています。東映移籍後の第一作となった本作では、その手腕を存分に発揮し、従来の梅宮辰夫主演作品とは異なる、純愛色の強い作品にしようと試みました。しかし、シリーズが進むにつれて、より過激な内容へと変化していきました。

梅宮辰夫は、当時「夜の帝王」を自認しており、そのイメージが作品にも反映されています。また、山城新伍とのコンビは、この作品からより深まったとされています。キャスティングでは、宣伝のため、銀座のホステスをオーディションで募集しましたが、実際には新宿や渋谷のホステスが採用されました。その中でも特に注目されたのが、山本マミで、彼女は日劇ミュージックホール出身の現役ホステス兼ダンサーでした。この作品で彼女は注目を浴びましたが、ギャラが少なかったことに不満を漏らしたというエピソードも残っています。

梅宮辰夫自身も、共演する女優探しに奔走し、自らネオン街に繰り出してスカウトを行っていました。彼のスカウトによって、多くの女性が芸能界へと進出しました。

主題歌「シンボルロック」

「帝王シリーズ」の主題歌として使用された「シンボルロック」は、その歌詞内容が過激であるため、放送禁止歌となった時期がありました。しかし、梅宮辰夫自身はこの曲を気に入っており、晩年までディナーショーなどで披露していました。

帝王シリーズ

「帝王シリーズ」は、全5作品で構成されています。

1. 『夜遊びの帝王』（1970年7月）
2. 『女たらしの帝王』（1970年9月）
3. 『未亡人（ごけ）ごろしの帝王』（1971年5月）
4. 『ポルノの帝王』（1971年12月）
5. 『ポルノの帝王 失神トルコ風呂』（1972年6月）

シリーズを通して、梅宮辰夫が夜の街で成り上がっていく姿が描かれています。監督が交代するごとに、作品の雰囲気も変化しており、特に内藤誠監督が担当した3作目以降は、梅宮のシンボルを武器にするという過激な設定が打ち出されています。シリーズは、当時人気だった任侠映画シリーズと併映され、その添え物として制作されましたが、その破天荒な内容が観客を魅了しました。

作品の評価

映画評論家の深沢哲也は、この作品を「梅辰の性格設定が同じ過ぎる。落語映画」と評しています。これは、シリーズを通して梅宮辰夫のキャラクターが固定化されていることを指摘したものです。

同時上映

「夜遊びの帝王」は、『遊侠列伝』という高倉健主演の映画と同時上映されました。

まとめ

「夜遊びの帝王」は、梅宮辰夫の魅力を最大限に引き出した作品であり、当時の社会や人々の欲望を映し出す鏡のような存在です。その破天荒なストーリーと、梅宮辰夫と山城新伍の絶妙なコンビは、今もなお多くの映画ファンを魅了し続けています。この作品は、単なる娯楽映画としてだけでなく、当時の社会現象や文化を研究する上でも重要な作品と言えるでしょう。

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