大友亀太郎

大友亀太郎：札幌開拓の祖、その功績と生涯

大友亀太郎（1834年 6月4日 - 1897年 12月14日）は、江戸時代後期から明治時代初期にかけて、北海道の開拓に大きく貢献した人物です。相模国（現在の神奈川県）出身の幕臣であり、二宮尊徳の門下生としても知られています。札幌市の中心部を流れる創成川の源流となる「大友堀」を建設するなど、用水路や橋梁を含む土地開発に尽力し、札幌村の土台を築き上げました。その功績から「開拓の祖」と称えられ、札幌市内には彼の像が設置され、札幌市時計台には生前の写真が展示されています。また、大友公園や資料を収蔵した記念館など、彼の功績を称える施設が今も残されています。

小田原から蝦夷地へ

天保5年（1834年）、大友亀太郎は相模国足柄下郡（現在の神奈川県小田原市）で農家を営む飯倉吉衛門の長男として生まれました。24歳の時に大友の姓を名乗るようになります。幼少期は天保の大飢饉の影響で貧しい環境にありましたが、勉学に励み、特に算術に秀でていました。22歳の時、大飢饉で衰退した村を救済し、復興に成功した二宮尊徳の門下生となり、農村復興政策「報徳仕法」を学びました。安政4年（1858年）、江戸幕府の領土保全のための開拓政策に基づき、後の渡島国に渡ります。

その後、箱館奉行所から「箱館在木古内村開墾場取扱」という役職に任命され、渡島国上磯郡および亀田郡（現在の木古内町と七飯町）の開墾に従事しました。約100ヘクタールの田畑を開発し、48戸の農家を入植させるという偉業を8年間かけて成し遂げました。慶応元年（1866年）には、石狩原野の開拓を含む蝦夷地開墾に関する計画書を箱館奉行所に提出。この実績が認められ、「蝦夷地開拓掛」に任命された亀太郎は、同年4月に同行者を連れて石狩国札幌郡（現在の札幌市東区）へと向かいました。

札幌の開拓

当時原生林が生い茂っていた札幌の地で、亀太郎はフシコサッポロ川（現在の伏籠川）の上流周辺地域を「御手作場」として定め、道路や橋などの社会基盤整備に着手しました。最新技術を駆使したこの工事には、約4キロメートルに及ぶ用排水路の建設計画が含まれており、これが後の創成川の土台となる「大友堀」の前身となりました。亀太郎は現在の石狩陸橋の北東から札幌村役場の裏側へ水路を造り、伏古川まで通じるように指導しました。この「百万両の大工事」には、彼が二宮尊徳から学んだ報徳仕法が取り入れられ、北海道における産業育成も目的とされていました。未開拓の土地に用排水路を設けたことは、札幌の街づくりの起点となりました。現在も大友堀は創成川の一部としてその姿を残しています。

慶応2年（1867年）には、御手作場に大友亀太郎の役宅が建設されました。この土地は後に札幌市によって史跡指定を受け、札幌村郷土記念館となっています。同年には大友堀が竣工し、用排水路としてだけでなく、運河としても機能するようになり、総工費は約3千両、従事した人数は450名に上りました。御手作場では、開拓の経営費や見積書を作成し、出張所や開拓使に提出していました。これらの文書には、入植農民や田畑の開発計画、収支などが詳細に記録されており、北海道開拓の歴史を物語る貴重な資料となっています。これらの古文書は後に札幌市に寄贈され、市の有形文化財として保存されています。

同年、亀太郎が中心となって開墾を行った現在の東区周辺は「札幌元村」と名付けられ、北海道外からの入植者が増加し、土地の開発は急速に進展しました。また、役宅の近くにある本龍寺の境内に妙見堂を建立しています。明治元年（1869年）に北海道開拓使が開設されると、亀太郎は兵部省出張所石狩国開墾掛、その後開拓使使掌に任命されました。土地の開拓は開拓使に引き継がれましたが、翌1870年に亀太郎は札幌を離れ、故郷の小田原市へ帰郷しました。背景には政府との意見の相違があったと言われています。1871年には札幌元村が札幌新村と合併し、「札幌村」と改称されました。肥沃な土地と大小の河川に恵まれた地域では、札幌黄を生み出した玉葱耕作など、新たな農業が展開されました。一方、亀太郎は故郷で神奈川県議会議員に当選し、地域の発展に尽力した後、1897年に生涯を閉じました。

没後

1986年5月、大友亀太郎像建立実行委員会によって、彼の功績を後世に伝えるために像が製作されました。彫刻家の松田与一らが製作に携わったこの像は、かつて大友堀と呼ばれた創成川のほとりに建設されましたが、2005年からは創成川両側のアンダーパスを連続化する工事のため、札幌村郷土記念館の敷地内に一時的に移設されました。彼の役宅があった場所に位置するこの記念館には、銅像の他に、彼に関する古文書が多数収蔵されており、資料と土地は1987年 2月20日に札幌市の有形文化財および史跡に指定されています。また、御手作場があった土地には現在「大友公園」が造られています。

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