大室山 (静岡県)

大室山について

大室山（おおむろやま）は、静岡県伊東市にそびえ立つ580メートルの標高を持つ独立峰の火山です。この山は、700年以上にわたって行われている早春の山焼きで特に知られ、一年生植物に覆われた姿が目を引きます。その特徴的な景観から、伊東市のシンボル的な存在となっています。また、山体は国の天然記念物および富士箱根伊豆国立公園に指定されており、その価値が認められています。

成り立ち

大室山は、伊豆東部火山群に属する単成火山のスコリア丘であり、約4000年前に噴火したとされています。これまで、約5000年前の噴火による形成が考えられていましたが、最近の研究により、工事現場で見つかった火山灰に埋没していた木の年代測定から新たな見解が得られました。

スコリア丘は、マグマが火口から噴き出し、塊状のスコリア（多孔質の暗色の石）が周囲に蓄積して円錐形の丘を形成したものです。大室山の底径は約1キロメートル、比高300メートルほどで、中心には直径250メートル、深さ40メートルのスリバチ状の火口があります。また、南斜面の450メートル付近には直径50メートルほどの小さな火口も存在します。整然とした形状と保存状態の良さから、大室山は日本におけるスコリア丘の代表例の一つとして位置付けられ、2010年には国の天然記念物に指定されました。

噴火とその影響

大室山の噴火は、10年以内の比較的短い期間に収束したとされています。噴火が進行する中で、西の麓から最初の溶岩流が湧き出し、南北の2方向へと流れ出しました。南に流れた溶岩は深い峡谷をせき止め、現在の池地区に湖を形成しました。この湖は明治時代に排水トンネルが掘られ、その後水田に変わりました。

その後、北東と南側の麓からは先述の溶岩流の約30倍に及ぶ大量の溶岩が噴出し、南東に流れたものは相模灘を埋め立て、城ケ崎海岸の特徴的な地形を生み出しました。この土地は後に観光地として注目を集め、伊豆高原として発展することになりました。北に流れた溶岩流は谷を埋め、一碧湖へも流れ込み、小島たちを形成しました。

噴火の終息に近づくと、火口には溶岩の粘度が増し、ドームが形成されました。一方、山頂の火口内では溶岩湖ができたものの、その後消失しました。最終的に南斜面から小規模な爆発が起こり、火口の跡が残り、大室山の噴火は終了しました。単成火山の特性により、再び噴火する可能性は低いとされています。

観光

大室山を訪れる観光客には、北麓からの登山リフトが利用できます。リフトに乗ると約6分で山頂に達し、整備された遊歩道を通って火口縁を周ることができます。以前は徒歩での登頂が可能でしたが、現在は立ち入りが禁止されています。火口底は長年観光アーチェリー場として利用されており、周辺にはさくらの里公園や伊豆シャボテン公園など観光施設が点在し、別荘地としても人気があります。

眺望

大室山からの眺望は素晴らしく、伊豆半島の東岸や天城山をはじめ、好天時には南アルプスから富士山、箱根の山々まで、さらには伊豆諸島や三浦半島、東京スカイツリーまで見渡すことができます。

山焼きの歴史

大室山での山焼きは、700年以上続いている伝統行事であり、良質なカヤを育成するために行われてきました。地元で育てられた茅は屋根の材料や牛馬の餌などに活用され、江戸へも出荷されていました。1960年からは、シャボテン公園が観光イベントとして主導し、1980年には山焼保存会が設立され、その活動を引き継いでいます。毎年2月第2日曜日に山焼きが行われ、観光客も参加することができます。

さくらの里

大室山の西北麓にあるさくらの里公園は、約4万平方メートルの敷地に40種、数千本の桜が植えられ、長い期間桜を楽しめるようになっています。毎年4月上旬には「伊豆高原さくらの里まつり」が開催され、公園がメイン会場となります。

神社と石仏

大室山浅間神社は、火口内の東側中腹に位置し、磐長姫命を祭神としています。安産や縁結びの神として信仰され、珍しい存在とされています。また、火口縁の西側には江戸時代に建てられた五智如来地蔵尊があり、参拝客が訪れています。八ケ岳地蔵尊も同様に、海上安全を願う漁師たちによって建立されました。

送信施設

大室山にはエフエム伊東の送信所が設置されていましたが、2022年に川奈の小室山に移転しました。このように、大室山は自然的・文化的な価値を保ちながら、観光地としても地域の発展に寄与しています。

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