大山村 (富山県)

大山村（おおやまむら）は、かつて富山県の上新川郡に存在した地方自治体です。富山県の中央部に位置し、その村域は主に常願寺川の上流域にあたる広大な山間部を占めていました。

村の東部は飛騨山脈（北アルプス）の一部をなし、薬師岳、北ノ俣岳、黒部五郎岳、赤牛岳、水晶岳、祖父岳、祖母岳、烏帽子岳、野口五郎岳、鷲羽岳、三俣蓮華岳といった日本を代表する多くの名峰を村域に含んでいました。また、鍬崎山なども村の主要な山です。これらの山々から流れ出る常願寺川が村の主要な河川であり、和田川、小口川、真川などの支流が村内を流れていました。電源開発によって形成された有峰湖や黒部湖（黒部ダム湖）といった人造湖も村域内に位置していました。

大山村は、1889年（明治22年）4月1日に施行された町村制によって発足しました。それまでの岡田村、東文殊寺村、西小俣村、東小俣村、長瀬村、手出村、赤倉村、小原村、河内村、隠土村、安蔵村、新町村、松木村、牧村、才覚地村、中地山村、下山和田村、小見村、本宮村、亀谷村、原村、水須村、有峰村の23村と、関連する入会地の区域が合併して誕生しました。村役場は当初、大字岡田に設置されました。

その後、大正時代には大字名の変更が行われ、東文殊寺が「文殊寺」に、下山和田が「和田」にそれぞれ改称されています。村役場は1942年（昭和17年）に大字小見へと移転しました。

村としての歴史は、昭和の大合併の中で幕を下ろします。1955年（昭和30年）1月1日、大山村は同じ上新川郡に属していた上滝町、大庄村、福沢村と合併し、新たに上新川郡大山町が発足したため、自治体としての大山村は消滅しました。

村内には、富山地方鉄道立山線が敷設されており、有峰口駅、本宮駅、粟巣野駅といった駅が設置され、地域住民や山岳観光客の重要な足となっていました。道路としては、有峰林道のような有料道路が山間部へのアクセスを担い、富山県道43号富山上滝立山線や富山県道67号宇奈月大沢野線といった主要地方道が村域を縦断・横断し、周辺地域との連携を支えていました。

自然豊かな村には、温泉地や山岳リゾートが点在していました。古くから人々に利用されてきた立山温泉や亀谷温泉は、村の代表的な湯治場でした。また、冬季には立山山麓スキー場が賑わいを見せ、極楽坂エリアやらいちょうバレーエリアといったゲレンデが多くのスキー・スノーボード愛好者を集めていました（粟巣野スキー場は村の消滅後の開業です）。これらの観光資源は、村の活性化に貢献していました。

大山村は、特定の分野で活躍した人物も輩出しています。金山穆韶（きんざん もくしょう）は、真言宗の僧侶であり、密教美術史の研究で知られています。また、宇治長次郎は、飛騨山脈を熟知し、登山家たちの活動を支えた高名な山案内人でした。

大山村は、広大な山岳地帯と豊かな自然を背景に独自の歩みを辿りましたが、1955年の合併により単独の自治体としての歴史を終えました。その村域は現在、大山町を経て富山市の一部となっています。

もう一度検索