大島幹雄

大島幹雄

人物概要

1953年8月20日生まれ、日本のノンフィクション作家。サーカス研究の第一人者であり、サーカス学会の会長を務めているほか、出身地である宮城県石巻市では、東日本大震災からの復興支援活動の一環として石巻学プロジェクトの代表を務め、地域の歴史や文化の継承、発信に深く関わっている。また、石巻若宮丸漂流民の会事務局長としても活動している。

来歴

宮城県石巻市に生まれた大島幹雄氏は、早稲田大学文学部露文科を卒業後、アフタークラウディカンパニー（ACC）に入社。ACCでは、世界中から著名なサーカス団や道化師を日本に招き、公演をプロデュースするという活動に従事した。この経験が、後のサーカス研究家としての基盤を築くこととなる。

2018年にACCを退職。翌2019年6月にはサーカス学会を設立し、その会長に就任した。学会での活動を通じて、サーカスの歴史や文化、社会的な意義に関する研究の推進に努めている。

東日本大震災後、生まれ故郷である石巻市に戻り、本格的に復興支援活動に関わるようになった。2015年には、石巻地域の歴史や文化を発掘し、過去・現在・未来を繋ぐことを目指す「石巻学プロジェクト」を結成し、その代表に就任。同年、プロジェクトの活動の一環として地域誌『石巻学』を創刊し、現在までに8号を刊行するなど、精力的に地域の文化振興に取り組んでいる。

教育活動にも携わっており、2001年から2023年まで早稲田大学の非常勤講師を務めた。

作家活動と主な著作

ノンフィクション作家として、大島氏はサーカス文化、漂流民、近現代史上の人物など、幅広いテーマで多くの著作を発表している。その筆致は、綿密な調査に基づきながらも、登場人物の人間像や時代の空気感を鮮やかに描き出すことに定評がある。

主要な著作には以下のようなものがある。

『サーカスと革命 道化師ラザレンコの生涯』平凡社 1990年
『海を渡ったサーカス芸人 コスモポリタン沢田豊の生涯』平凡社 1993年
『魯西亜から来た日本人 漂流民善六物語』廣済堂出版 1996年
『シベリア漂流 玉井喜作の生涯』新潮社 1998年
『虚業成れり 「呼び屋」神彰の生涯』岩波書店 2004年
『ボリショイサーカス』東洋書店 ユーラシア・ブックレット 2006年
『満洲浪漫―長谷川濬が見た夢』藤原書店 2012年
『サーカスは私の＜大学＞だった』こぶし書房 2013年
『明治のサーカス芸人はなぜロシアに消えたのか』祥伝社 2013年 (新潮文庫版 2015年)
『“サーカス学”誕生―曲芸・クラウン・動物芸の文化誌』せりか書房 2015年
『語り継ぐ横浜海軍航空隊』有隣新書 2018年
『日本の道化師 ピエロとクラウンの文化史』平凡社新書 2021年

また、翻訳書としてレザーノフの『日本滞在日記 1804-1805』（岩波文庫 2000年）を手がけている。

大島氏の活動は、失われつつあるサーカス文化の記録と再評価、歴史に埋もれた漂流民やユニークな人物の掘り起こし、そして故郷石巻の豊かな歴史・文化を現代に繋ぐ地域振興という、多角的な側面を持ち合わせている。これらの活動は、日本の近現代史、文化史、そして地域社会の再生という広範なテーマに対し、深く洞察に満ちた視点を提供している。

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