大崎史郎

大崎史郎：サイレント映画から時代劇へ至る波瀾万丈の俳優人生

大崎史郎（1900年1月2日 - 1967年11月）は、日本の映画史に名を刻む俳優である。京都で生まれた彼は、京都中学卒業後、中山美術研究所で研鑽を積んだ。その後、俳優の道を志し、「京都宗教演戯社」や「京都童話劇協会」といった劇団に所属し、地方巡業で舞台経験を積んだ。

1925年、日活大将軍撮影所の現代劇部に入社。三枝源次郎監督の『愛児の行衛』や楠山律監督の『娘の行商』に出演し、映画デビューを果たす。同年公開の三枝監督作品『美人征服』では早くも主演に抜擢されるなど、持ち前のユーモラスな演技で注目を集め、準主役級や脇役として活躍した。

1929年の撮影所移転に伴い太秦へ、そして1934年には現代劇部の多摩川撮影所（後の角川大映撮影所）へ移る。同年秋には京都に戻り、時代劇へ転向する転機を迎える。多摩川時代には、曾我廼家五九郎の浅草公園六区「金龍館」での舞台にも出演している。

1942年、日活を退社。戦後は大映京都撮影所に復帰し、溝口健二監督の代表作『雨月物語』（1953年）や『近松物語』（1953年）といった名作に出演。溝口組作品に参加したことは、彼の俳優人生において大きな意義を持っていたと推測できる。これらの作品で培った演技力は、後年の活躍の礎となっただろう。

1960年からは東映京都撮影所に所属。1962年には東京宝塚劇場で上演された長谷川一夫主演、北条秀司作の舞台『西陣息子』で、長谷川一夫、松本幸四郎（8代目）、中村扇雀（2代目）らと共演。長谷川演じる主人公とその兄弟の父親役を演じ、ベテラン俳優としての貫禄を見せつけた。

大崎史郎は、サイレント映画時代からトーキー時代、そして戦後と、日本の映画界の変遷を肌で感じながら、現代劇から時代劇へと演じるジャンルも変えつつ、長きに渡り活躍した名優であった。日活、大映、そして東映と、主要な撮影所に所属し、数々の名監督、名優たちと共演した経験は、彼の豊かな表現力と幅広い演技力へと繋がったと言えるだろう。70本を超える作品に出演し、日本の映画史に貢献した彼の功績は、これからも語り継がれていくに違いない。1967年11月、67歳でこの世を去ったが、彼の残した作品は、多くの観客の心に今も深く刻まれている。

主な出演作品

『愛児の行衛』（1925年、監督：三枝源次郎） - 映画デビュー作
『娘の行商』（1925年、監督：楠山律）
『美人征服』（1925年、監督：三枝源次郎） - 主演
『日本嬢 (ミスニッポン)』（1931年、監督：内田吐夢）
『関の弥太ッぺ』（1935年、監督：稲垣浩・山中貞雄）
『忠臣蔵 地の巻・天の巻』（1938年、監督：池田富保・マキノ正博）
『鴛鴦歌合戦』（1939年、監督：マキノ正博）
『雨月物語』（1953年、監督：溝口健二）
『近松物語』（1953年、監督：溝口健二）
『次郎長血笑記 殴り込み道中』（1960年、監督：工藤栄一）
『宮本武蔵』（1961年、監督：内田吐夢）
『恋や恋なすな恋』（1961年、監督：内田吐夢）

関連事項

日活撮影所
大映京都撮影所
* 東映京都撮影所

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