曾我廼家五九郎

曾我廼家五九郎：浅草喜劇王の生涯

曾我廼家五九郎（そがのや ごくろう、1876年4月12日 - 1940年7月7日）は、日本の喜劇俳優であり、本名は武智故平（たけち こへい）です。彼は大正時代に浅草の「喜劇王」として名を馳せました。

生い立ちと初期の活動

1876年（明治9年）に徳島県麻植郡鴨島町で生まれた五九郎は、自由民権運動に感化され、16歳で上京。板垣退助の書生となります。その後、大阪で中江兆民のもとに身を寄せ、道頓堀の浪花座で初舞台を踏みました。川上音二郎や福井茂兵衛らの新派劇団を経て、1907年（明治40年）に曾我廼家五郎の一座に入り、「曾我廼家五九郎」を名乗りました。

浅草での活躍

1910年（明治43年）に独立し一座を立ち上げ、上京。有楽座で旗揚げ公演を行い、1912年（明治45年）には浅草に進出しました。浅草では、吉沢商店が経営する浅草帝国館を中心に活動を展開。川上貞奴や小山内薫、二代目市川左團次らの影響を受け、女優を積極的に起用したり、オペラの要素を取り入れた「五九郎ミュージカル」を上演するなど、新たな喜劇のスタイルを追求しました。

しかし、劇団間の引き抜き合戦により、五九郎の一座は分裂。分裂した一座は、曽我廼家五一郎を名乗る男が率いることになりました。

1917年（大正6年）には、浅草公園六区の観音劇場の経営を任され、一座で公演を行う傍ら、浅草の通俗教育昆虫館の経営を支援するなど、地域文化の発展にも貢献しました。

映画出演と晩年

1925年（大正14年）には、麻生豊の漫画『ノンキナトウサン』を映画化した作品に主演し、人気を博しました。特に、畑中蓼坡監督の『ノンキナトウサン 花見の巻』や小沢得二監督の『ノンキナトウサン 活動の巻』でのトウサン役は、五九郎の当たり役となりました。また、直木三十五や牧野省三らの作品にも出演し、映画界でもその才能を発揮しました。

五九郎の一座には、木村駒子、桜木文子、柳永二郎、伴淳三郎など、多くの俳優が在籍していました。

1940年（昭和15年）7月7日、曾我廼家五九郎は64歳で亡くなりました。彼の死後、弟子の「一二三」が二代目五九郎を襲名しました。1962年（昭和38年）には、小生夢坊らによって浅草奥山庭園に「五九郎碑」が建立され、その功績が称えられました。

映画出演

おとし穴 (1910年)
干物 (1911年)
挨拶違ひ (1912年)
八公 (1925年)
ノンキナトウサン 花見の巻 (1925年)
ノンキナトウサン 活動の巻 (1925年)
山賊 (1926年)
娑婆の風 (1929年)
* ルンペンとその娘 (1931年)

曾我廼家五九郎は、浅草の喜劇界に大きな足跡を残し、日本の大衆演劇史にその名を刻んでいます。

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