大村英之助

大村英之助:映画と社会運動に生きた激動の生涯



大村英之助(おおむら えいのすけ)は、1905年10月13日北海道で生まれ、1986年3月23日に亡くなった日本の映画プロデューサー実業家です。彼は、戦前から戦後にかけて、映画製作の世界で多岐にわたる活動を展開する一方で、社会運動にも深く関わりました。その生涯は、まさに激動の時代を反映したものでした。

マルクス主義への傾倒と映画製作の道



大村は、朝鮮総督府鉄道局長などを務めた大村卓一の次男として生まれました。東京帝国大学経済学部在学中には日本共産党に入党し、地下活動に身を投じました。度重なる検挙を経験した後、1932年に大学を卒業。その後、音画芸術研究所を設立し、映画製作の道へ進みます。PCL(後の東宝)に入社するも、すぐに逮捕され、2年間入獄しました。出所後、染谷格らと芸術映画社(GES)を創業し、本格的な映画製作を開始しました。

芸術映画社での活躍と文部大臣賞



芸術映画社では、記録映画やアニメーションなど、多様なジャンルの作品を製作しました。特に、石本統吉監督の記録映画『雪國』は、文部大臣賞を受賞するほどの高い評価を受けました。また、瀬尾光世監督の長編アニメーション映画『桃太郎の海鷲』もプロデュースしました。芸術映画社は、文化映画の発展に大きく貢献したといえるでしょう。

戦後の混乱期と共産党での活動



戦後は、日本移動映写連盟の会長を務め、日本放送協会放送委員会の顧問委員会委員にも選ばれました。その後、朝日映画社の製作局長、日本民主主義文化連盟の理事長、日本共産党の文化部長などを歴任し、社会運動に積極的に参加しました。しかし、共産党分裂後は、地下組織の財政責任者となったとされています。

人形アニメーション製作への情熱



1961年には、かつての部下であった持永只仁、松本酉三とともに、人形アニメーション製作会社「MOMプロダクション」を設立しました。MOMプロダクションは、アメリカのランキン=バス・プロダクションの下請け制作も行い、岡本忠成も入社しました。1971年には、MOMプロダクションの後身であるビデオ東京プロダクションが制作した人形アニメーション『てんまのとらやん』の企画を担当しました。この作品は、第7回モスクワ国際映画祭児童映画部門銀賞、1972年度教育映画祭最高賞を受賞するなど、国内外で高い評価を得ました。

晩年と功績



晩年は、映画評論や社会運動に関する執筆活動も行いました。1984年には、自由民権百周年記念映画『秩父事件—絹と民権』の監修を務めました。1986年3月23日、80歳でこの世を去りました。大村英之助は、映画製作者としてだけでなく、社会運動家としても、激動の時代を生き抜いた人物でした。彼の情熱は、映画や社会運動に大きな影響を与え、多くの人々に記憶されています。

主な作品



記録映画:
『雪國』(1939年) - 文部大臣賞受賞
『チョンリマ(千里馬)』(1964年)

アニメーション:
『桃太郎の海鷲』(1943年)
『てんまのとらやん』(1971年) - モスクワ国際映画祭児童映画部門銀賞、教育映画祭最高賞


参考文献



* 『文化評論』誌 (1980年5月号) エッセイ「本郷新と私」

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