持永只仁

持永只仁（もちなが ただひと）：人形アニメーションの先駆者

持永只仁（1919年3月3日 - 1999年4月1日）は、日本のアニメーション監督、人形アニメーション作家です。その生涯は、アニメーション黎明期から人形アニメーションの発展、そして国際的な活躍に至るまで、多岐にわたります。

アニメーションの世界へ

持永は、芸術映画社でアニメーションの世界に入りました。その後、満州映画協会に入社し、第二次世界大戦終結後も中国東北部に残留。中国名「方明」として、アニメーション映画製作に携わりました。中華人民共和国建国後は上海に移動し、上海美術映画製作所の前身となるアニメスタジオ設立に貢献。中国のアニメーション発展に大きな足跡を残しました。

人形アニメーションへの挑戦

帰国後、持永は人形アニメーションの製作に力を注ぎました。1955年には稲村喜一と共に「人形映画製作所」を設立。電通映画社の後援を受け、日本初の人形アニメーション作品「瓜子姫とあまのじゃく」を完成させました。この作品は、日本の人形アニメーションの基礎を築いただけでなく、その後の人形アニメーションの発展に大きな影響を与えました。また、1956年の「ちびくろさんぼのとらたいじ」はバンクーバー国際映画祭児童映画部門最高賞を受賞し、その芸術性が国際的に認められました。

MOMプロダクションでの国際的な活躍

「人形映画製作所」の活動停止後、持永はMOMプロダクションを設立。ランキン/バス・プロダクションとの提携で、アメリカTV放映用人形アニメーションを多数製作しました。「ピノキオの冒険」や「ルドルフ 赤鼻のトナカイ」など、国際的に知られる名作もこの時期に制作されています。

その後

MOMプロダクション退社後は、中国通信社でニュース映画製作に従事する傍ら、後進の指導にもあたりました。持永の功績は、その生涯を通じて日本と中国のアニメーション文化に貢献したことであり、その影響は現代のアニメーションにも受け継がれています。

持永只仁の年譜

1919年：東京市神田錦町で生まれる。
1928年：佐賀県佐賀市に移り、小学校、旧制中学校・高等学校に進学。美術とアニメーションに傾倒。
1938年：日本美術学校図案応用科卒業。東京女子美術工芸学校、東京宝塚劇場舞台課等で働く。
1939年：芸術映画社入社。瀬尾光世の下で多層式アニメ撮影台を開発。
1943年：国産アニメ『桃太郎の海鷲』で撮影や技術を担当。
1945年：満州映画協会入社。敗戦後も中国に残り、東北電影公司の設立に協力。
1950年：上海電影製片廠の「美術片組」創立に協力。人形アニメーションを始める。
1953年：帰国事業で日本へ帰国。
1955年：「人形映画製作所」設立。
1956年：日本初の人形アニメ「瓜子姫とあまのじゃく」を完成。「ちびくろさんぼのとらたいじ」がバンクーバー国際映画祭児童映画部門最高賞を受賞。
1960年：MOMプロダクション設立。ランキン/バス・プロダクションとの提携でアメリカTV放映用人形アニメーションを多数製作。
1967年：MOMプロダクション退社。
1999年：逝去。享年80歳。

フィルモグラフィー（一部抜粋）

戦前・戦中：「アヒルの陸戦隊」「アリチャン」「桃太郎の海鷲」「フクちゃんの潜水艦」など
中国時代：「翻身年」「皇帝梦」「甕中捉龞」「謝謝小花猫」「小鉄柱」「小猫釣魚」など
帰国後：「瓜子姫とあまのじゃく」「五匹の子猿たち」「ちびくろさんぼのとらたいじ」「ちびくろさんぼとふたごのおとうと」「ふしぎな太鼓」「こぶとり」「ぶんぶくちゃがま」「ペンギンぼうやルルとキキ」「王さまになった狐」など
MOMプロダクション時代：「ピノキオの冒険」「ルドルフ 赤鼻のトナカイ」「Willy McBean and his Magic Machine」「The Daydreamer」「The Ballad of Smokey the Bear」「Mad Monster Party?」など
MOMプロダクション退社後：「喵鳴是誰叫的？」「少年と子だぬき」など

著書

* 『アニメーション日中交流記 持永只仁自伝』

持永只仁の遺産

持永只仁の功績を称え、中国には「持永只仁賞」「持永只仁奨学金」などが存在しています。彼は、アニメーションの世界に多大な貢献をしただけでなく、その作品を通じて多くの人々に夢と感動を与えました。

彼の作品は今もなお、多くの人々に愛され続けています。

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