大東興業

大東興業株式会社について

大東興業株式会社は、かつて存在した日本の映画製作会社です。一般には「大東映画」という通称で知られていました。略称は「大東」です。1958年（昭和33年）11月に、滋賀県で映画館を経営していた角正太郎が、独立映画の傍系会社として設立しました。

設立当初、東京都中央区に本社を構え、映画製作を行っていました。大東興業は、わずか2作品のみを製作しましたが、その内容は社会派で、映画史に残る作品として知られています。

設立の背景

大東興業の設立には、当時の映画業界の複雑な事情が絡み合っています。角正太郎は、滋賀県草津市で映画館を経営する傍ら、独立映画の取締役も務めていました。独立映画は、かつて北星映画という会社が前身で、伊藤武郎が代表を務めていました。しかし、日活が自主製作を再開したことで、独立系の映画製作会社は苦境に立たされていました。独立映画でも、配給する作品が少なくなり、経営状況は悪化していました。そこで、角正太郎は、独立映画から独立する形で大東興業を設立したのです。

設立当初の大東興業には、映画監督の今井正や山本薩夫など、多くの映画関係者が役員として参加していました。彼らは、独立映画の役員も兼務していました。しかし、大東興業設立の1ヶ月後には、独立映画は配給業務を停止してしまいます。

製作作品

大東興業が製作した作品は、以下の2作品です。

1. 『キクとイサム』：1959年公開。監督は今井正。在日朝鮮人の少年を主人公にした作品で、社会派ドラマとして高い評価を得ました。配給は松竹が行いました。
2. 『武器なき斗い』：1960年公開。監督は山本薩夫。戦前の労働運動家・山本宣治をモデルにした作品で、労働者の視点から社会を描いています。

これらの作品は、いずれも社会的なテーマを扱い、当時の社会情勢を反映した内容となっています。

その後

大東興業は、2作品を製作した後、活動を停止しました。設立からわずか数年という短い期間でしたが、その作品は、今でも多くの人に語り継がれています。大東興業の設立と活動停止は、当時の日本映画界の激動期を象徴する出来事の一つと言えるでしょう。

大東興業が設立された背景には、映画業界の複雑な状況がありました。独立系の映画製作会社は、大手映画会社に対抗するために、独自の路線を模索していました。大東興業も、その一つでした。

大東興業の作品は、社会的なテーマを扱い、多くの人々に影響を与えました。その作品は、現在でも映画史に残る名作として、評価されています。

企業情報

社名：大東興業株式会社
所在地：東京都中央区銀座2丁目5番地（設立当初）
代表取締役社長：角正太郎
設立：1958年11月2日
資本金：1,000万円

フィルモグラフィー

『キクとイサム』：監督 今井正、1959年3月29日公開
『武器なき斗い』：監督 山本薩夫、1960年11月8日公開

参考文献

『映画年鑑 1956 別冊 映画便覧』、時事通信社、1956年発行
『映画年鑑 1957』、時事通信社、1957年発行
『映画年鑑 1958 別冊 映画便覧』、時事通信社、1958年発行
『左翼文化年報 1958年版』、星光社、1958年発行
『左翼文化年報 1959年版』、星光社、1959年発行
『映画年鑑 1960』、時事通信社、1960年発行
『近代日本思想史講座 5 指導者と大衆』、久野収・隅谷三喜男、筑摩書房、1960年9月5日 ISBN 4480301054
『左翼団体事典 1961年版』、社会運動調査会、武蔵書房、1961年発行
『映画年鑑 1961』、時事通信社、1961年発行
『映画年鑑 1962』、時事通信社、1962年発行
『映画年鑑 1964』、時事通信社、1964年発行
『日本映画発達史 IV 史上最高の映画時代』、田中純一郎、中公文庫、中央公論社、1976年3月10日 ISBN 4122003156
『私の映画人生』、山本薩夫、新日本出版社、1984年2月発行
* 『講座日本映画 5 戦後映画の展開』、今村昌平・新藤兼人・山田洋次・佐藤忠男・鶴見俊輔、岩波書店、1987年1月14日 ISBN 4000102559

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