武器なき斗い

映画『武器なき斗い』について

『武器なき斗い』は、1960年（昭和35年）に大東映画が製作・配給した日本の映画です。この作品は、労働農民党の代議士であった山本宣治の生涯を、彼の没後30年を記念して映画化したものです。原作は、西口克己による小説『山宣』です。

制作の背景

映画化のきっかけは、西口克己の講演会後、大阪市電の勤務者が映画化を提案したことでした。製作資金は、大阪市交通局の労働組合や私鉄の労働組合、大阪総評傘下の労働者たちが呼びかけ、募金活動を展開しました。関西在住の3,000人が発起人となり、「山宣映画化実行委員会」を結成、700万円のカンパが集められました。撮影には、延べ3,700人ものエキストラが動員され、当時の社会的な関心の高さが伺えます。

あらすじ

物語は、京都府宇治市の料亭を営む夫婦のもとに生まれた山本宣治の人生を追います。同志社大学の講師として教鞭を執りながら、性教育の啓発や産児制限運動にも積極的に関わっていました。その後、労働農民党の京都府連合会委員長に就任し、第1回普通選挙で代議士として当選を果たします。しかし、治安維持法改正に反対し、国会での質疑を準備していた矢先、山本が宿泊していた東京の旅館に見知らぬ男が訪れるという衝撃的な展開を迎えます。

スタッフ

監督: 山本薩夫
製作: 角正太郎、伊藤武郎
原作: 西口克己
脚本: 依田義賢、山形雄策
撮影: 前田実
音楽: 林光
美術: 久保一雄
録音: 安惠重遠
編集: 河野秋和

キャスト

山本宣治（宣治）: 下元勉
妻千代（妻）: 渡辺美佐子
山本亀松（父）: 東野英治郎
山本多年（母）: 細川ちか子
本田（学生）: 中谷一郎
（書記）: 谷育子
清（農民）: 小沢昭一
さき（その母）: 岸輝子
谷（地下党員）: 宇野重吉
柳（地下党員）: 浜田寅彦
（地下党員）: 斎藤美和
（日農委員長）: 大町文夫
福原秀雄
蓮田: 山内明
（弁護士）: 中村俊一
（支配人）: 山村弘三
三浦（教授）: 信欣三
渡辺（教授）: 清水将夫
長船（大地主）: 河原崎長十郎
大上（大地主）: 小沢栄太郎
峯（差配）: 松本克平
（警察署長）: 清水元
（巡査部長）: 三島雅夫
黒田（七生義団員）: 南原宏治
望月（内務大臣）: 宮口精二
秋田（政府委員）: 永井智雄
杉森（親分）: 多々良純
（教授）: 市川男女之助
藤崎（助手）: 矢野宣
北島（刑事）: 田中邦衛
滝井のおばさん（おばさん）: 毛利菊枝
（芸者）: 利根はる恵
木村: 山本学
木下サヨ子
田中敬子
遠藤辰雄
（刑事）: 溝田繁

エピソード

この映画は、白黒で撮影されましたが、ラストシーンのみパートカラーで表現されています。また、作中には、様々な労働組合の旗や日本共産党の地方組織の党旗が登場します。公開は1960年11月8日に行われ、その直前の10月12日に日本社会党委員長・浅沼稲次郎がテロにより暗殺された事件の影響もあり、社会的な注目を集めました。

関連文献

『年鑑代表シナリオ集 1960年版』（シナリオ作家協会編、ダヴィッド社、1961年）
山形雄策「山宣映画『武器なき闘い』製作・上映運動の総括」『前衛』1961年8月号

外部リンク

武器なき斗い - allcinema

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