大橋正

大橋 正（おおはし ただし）

大橋正は、1916年3月31日に京都府京都市で映画館の支配人の家庭に生まれた日本のグラフィックデザイナーです。彼の名は、戦後の日本のデザイン界において特に知られており、数多くの業績を残しています。

学歴と初期のキャリア

大橋は1937年に東京高等工芸学校（現：千葉大学工学部）の図案科を卒業しました。卒業後は大阪の大丸百貨店の図案部に勤務し、後に装飾部を経て、京都大丸百貨店の宣伝部での仕事に従事しました。この頃、彼の才能が開花し、京都大丸に勤務していた3年目の頃に、日本電報通信社（現在の電通）が主催する新聞広告の懸賞で最優等賞と二等賞を受賞し、賞金として1700円を手にしました。この成功を受けて、彼は電通に招かれ、1940年に東京へと移住しました。

戦時中の活動

ボラティリティが高まる戦局の影響を受けながらも、彼は電通の出版部に移り、清水達夫と共にPR誌『日本電報』の編集に携わりました。しかし、戦争の激化によって、彼らは国のプロパガンダに従事するために「日本宣伝技術家協会」へと派遣されました。その後、大橋は丙種召集で京都の十六師団に入隊しましたが、虚弱体質のため除隊となり、翌年の敗戦を迎えました。

戦後の独立と成功

戦後、大橋はデザイナーとして独立し、清水の依頼を受け、雑誌『平凡』の表紙を創刊号から描きました。また、資金難の中で同誌が廃刊の危機を迎えた時、自らの住宅購入資金を提供して救ったという逸話もあります。その後、1948年からは電通の嘱託として活動し、1950年からはキッコーマンのアートディレクターやデザイン、イラストレーションを担当しました。特に、キッコーマンのトレードキャラクター「キッコちゃん」を生み出したことでも知られています。

受賞歴と影響力

大橋はその後も数多くのデザイン展に参加し、1955年には戦後最大のデザイン展「グラフィック'55」にも名を連ねました。1951年には亀倉雄策たちと共に日本宣伝美術会（日宣美）を結成し、1957年に明治製菓のポスターで日宣美会員賞を受賞しました。1965年からは東京アートディレクターズクラブ（東京ADC）の会員としても活動しており、ADC賞や毎日デザイン賞などの栄誉も獲得しています。

教育活動と後年

教育にも力を入れ、1956年から1960年まで千葉大学の講師、1961年から1967年まで武蔵野美術大学の講師を務めました。1981年から1985年には同大学の客員教授としても教鞭をとりました。彼の業績は多岐にわたり、毎日デザイン賞を2回、日宣美会員賞を2回受賞しているほか、ADC賞金・銀・銅賞なども受賞しています。1982年には山名賞、1984年には紫綬褒章、1986年には国際イラストレーション・ビエンナーレ顕彰者、1990年には勲四等旭日小綬章を受賞しました。

社会的地位と著作

大橋は東京アートディレクターズクラブの評議員、また日本グラフィックデザイナー協会の元理事、東京デザイナーズスペースの会員、東京イラストレーターズ・ソサエティの会員でもあります。また、武蔵野美術大学では名誉教授の称号を得ているなど、教育者としても高く評価されていました。著書としては絵本『うたのないきゅうかんちょう』や、作品集『大橋正の博物誌』などが存在します。大橋正のデザイン活動は、現在も多くの人々に影響を与え続けています。

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