大江時棟

大江時棟（おおえ の ときむね）は、平安時代中期に活躍した貴族であり、文人としても名を残しています。生没年は不明ですが、その足跡は当時の記録に詳細に記されています。

時棟は、式部大輔であった大江匡衡の養子となりました。彼は文章生として学問を修め、大学允に任官されます。その後、長徳3年（997年）には省試に合格しますが、紀斉名によって漢詩の瑕疵を指摘され、落第となります。この出来事は、養父である匡衡と紀斉名の間で省試論争を引き起こすこととなりました。

一条天皇の時代、寛弘元年（1004年）に時棟は権少外記に任ぜられ、翌年には外記、さらに寛弘4年（1007年）には大外記へと昇進し、外記局で順調にキャリアを積みます。寛弘5年（1008年）には巡爵により従五位下・讃岐介に叙任され、地方官としての道を歩み始めました。

地方官としては、寛弘9年（1012年）に安房守、寛仁4年（1020年）には出羽守を歴任しました。出羽守に赴任した年の正月には、除目の際に文室清忠の冠を笏で落としてしまうという出来事も記録されています。万寿元年（1024年）には、藤原頼通、藤原教通、藤原実資らに馬や胡簶・矢漆を献上しており、その交流が伺えます。また、「任終の年」には、藤原頼通の屋敷に滞在し、「上下奇しむ所」であったと伝えられています。

その後、時棟は大学頭を務め、長元4年（1031年）にはその学識と行政手腕が評価され、正五位下に昇進しました。後冷泉天皇の時代、永承3年（1048年）頃には河内守を務めたことが記録されています。


官歴

時期不詳：文章生、大学允
長徳3年（997年）7月17日：省試
寛弘元年（1004年）11月7日：権少外記
寛弘2年（1005年）正月：外記
寛弘4年（1007年）正月：大外記
寛弘5年（1008年）正月：従五位下、讃岐介
寛弘9年（1012年）正月27日：安房守
長和4年（1015年）日付不詳：去安房守？
寛仁2年（1018年）3月19日：見前安房守
寛仁4年（1020年）正月15日：見従五位上。9月19日：出羽守
長元3年（1030年）5月15日：見前出羽守
長元4年（1031年）11月16日：正五位下。見大学頭
永承3年（1048年）12月10日：見河内守


系譜

養父：大江匡衡
生母不詳の子女
男子：大江経成
男子：大江安成
男子：大江成家


大江時棟は、学問に励み、官僚として着実にキャリアを重ねた人物であり、平安時代中期の貴族社会において重要な役割を果たしたと言えるでしょう。彼の生涯は、当時の社会や文化を知る上で貴重な手がかりとなります。

参考文献

摂関期古記録データベース
『左経記』
『御堂関白記』
『小右記』
『小記目録』
宮崎康充編『国司補任 第四』続群書類従完成会、1990年
井上幸治編『外記補任』続群書類従完成会、2005年
『日本人名大辞典』講談社、2001年

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