玉樹チベット族自治州

玉樹チベット族自治州は、中国青海省に位置するチベット民族の自治州です。チベット語では「ユフ・プーリー・ランキョン・クル」と表記され、その名の通り、チベット文化が色濃く残る地域として知られています。中国名の「玉樹」は、この地の伝統的な呼称である「ユルシュル」に由来しますが、現在のチベット語名はこの「玉樹」から再音写されたものです。

地理的には、チベットの伝統的な区分で大部分がアムド地方に属し、東南部はカム地方の北部に位置しています。州都は玉樹市のケグ鎮にあり、ここはかつて「ジェクンド」とも呼ばれていました。周辺は、北に海西モンゴル族チベット族自治州と新疆ウイグル自治区、東にゴロク・チベット族自治州と四川[[省]]のカンゼ・チベット族自治州、西から南にかけては海西モンゴル族チベット族自治州の飛び地を挟みチベット自治区のナクチュ地区、そして南はチャムド市と接しています。

民族構成は、チベット族が97.25%と圧倒的多数を占め、漢族は2.56%です。歴史を振り返ると、玉樹はかつて吐蕃（チベット帝国）の一部であり、元朝時代には吐蕃等路宣慰司の管轄下にありました。明末清初にはモンゴルのホショート部が侵攻し、玉樹のチベット族の首長たちを支配し、爵位を与えて台吉（領主）としました。清朝末期には西寧弁事大臣の直接管轄下に置かれ、民国時代には玉樹、囊謙、称多の3県が設置され、その下の千百戸制度は維持されました。

1914年、北洋政府は周務学を隊長とする調査隊を派遣し、周希武が玉樹地域を詳細に調査しました。彼の著書『玉樹土司調査記』は、当時の玉樹の様子を伝える貴重な資料となっています。この調査に基づき、1916年には玉樹が青海省の管轄範囲に組み入れられました。国共内戦を経て、1949年には中国人民解放軍が玉樹を掌握し、玉樹特派員事務所が設立されました。1950年には玉樹専区が設立され、1952年には玉樹チベット族自治区が誕生しました。その後、1955年には玉樹チベット族自治州に改称され、現在に至ります。

2010年には青海地震が発生し、玉樹も大きな被害を受けましたが、その後の復興は目覚ましいものです。2021年には建州70周年を迎え、競馬やパレードなどの祝賀行事が開催され、地域文化の振興も図られています。

交通面では、玉樹巴塘空港が開港し、G109国道（青蔵公路）とG214国道が整備されています。

行政区画は、玉樹市と嚢謙県、曲麻莱県、称多県、雑多県、治多県の1市5県から構成されています。

玉樹チベット族自治州の年表

1949年10月27日：玉樹特派員弁事処が成立し、玉樹県、称多県、嚢謙県を編入。
1950年6月：玉樹特派員弁事処が玉樹専区に改称。
1951年12月25日：玉樹専区が民族自治区に移行し、玉樹チベット族自治区となる。玉樹県が称多県・嚢謙県に分割編入。
1952年11月：称多県・嚢謙県の各一部が合併し、玉樹県が発足。
1953年9月30日：曲麻莱区を編入。玉樹県・嚢謙県の各一部が合併し、扎朶県が発足。曲麻莱区が県制施行し、曲麻萊県となる。玉樹県・称多県の各一部が合併し、優秀県が発足。
1953年12月30日：優秀県が直多県に改称。
1954年12月7日：直多県が治多県に改称。扎朶県が雑多県に改称。
1955年4月：玉樹チベット族自治区が玉樹チベット族自治州に改称。
1959年1月22日：玉樹県、嚢謙県、雑多県、治多県の各一部が合併し、江南県が発足。称多県、治多県の各一部が合併し、天河県が発足。
1962年10月20日：江南県が玉樹県に編入。天河県が称多県・曲麻萊県に分割編入。
2013年7月3日：玉樹県が市制施行し、玉樹市となる。

玉樹チベット族自治州は、その歴史、地理、文化、そして近年の発展を通じて、多様な側面を持つ魅力的な地域です。伝統文化を継承しつつ、現代的な発展も遂げるこの地の今後に注目が集まります。

参考資料

A. Gruschke: The Cultural Monuments of Tibet’s Outer Provinces: Kham - Volume 2. The Qinghai Part of Kham (Yushu), White Lotus Press, Bangkok 2005. ISBN 974-480-049-6
Tsering Shakya: The Dragon in the Land of Snows. A History of Modern Tibet Since 1947, London 1999, ISBN 0-14-019615-3
青海省玉树州人民政府

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