大秦線

大秦線：中国のエネルギー輸送を担う大動脈

大秦線は、中国の山西省大同市から河北省秦皇島市を結ぶ、全長652kmの貨物専用電化路線です。この路線は、中国国鉄の貨物列車が運行しており、2004年以降は大秦鉄道会社によって管理されています。大秦線は、石炭輸送を主目的として建設され、中国の経済発展に不可欠なエネルギー輸送を支える重要な役割を担っています。

歴史

1980年代、中国では経済成長に伴いエネルギー需要が急増し、火力発電に使用される石炭の需要も増大しました。しかし、当時の中国国鉄の輸送能力は十分でなく、主要な石炭輸送ルートであった豊沙線は輸送能力の限界に達していました。そこで、新たな石炭輸送ルートとして建設されたのが大秦線です。

大秦線は二段階に分けて建設されました。第一期工事区間は大同から大石荘、秦皇島から秦皇島港の間で、中国の資本によって建設されました。一方、第二期工事区間の大石荘から秦皇島の間は、日本の円借款によって建設されました。当初は単線交流電化として開業する予定でしたが、石炭需要の急速な増加に対応するため、全線複線で開業することになりました。これにより工期は1年遅れたものの、建設費用は当初の見積もりよりも削減されました。

1985年に第一期工事が着工し、1988年に完成。第二期工事も同年に着工され、1992年12月に全線が開通しました。大秦線の開業により、石炭輸送量は大幅に増加し、2000年には6,052万トン、2002年には1億34万トンに達しました。輸送量の増加に対応するため、2003年には路線の拡張工事が行われ、2004年には最大5両の電気機関車と216両の貨車からなる、積載量2万トンの貨物列車の試験走行に成功しました。さらに、2014年には積載量3万トンの貨物列車の試験運転も成功しています。2017年上半期の輸送量は累計2億4,638万トンにも達し、現在も需要は増加し続けています。

なお、開業当初は旅客列車も運行していましたが、2004年4月17日をもって廃止され、現在は貨物専用路線となっています。

路線

大秦線は、大同炭田を擁する大同市と、中国最大のエネルギー輸出港である秦皇島港を結ぶ、全長652kmの路線です。全線複線・交流電化となっており、58箇所のトンネルと421箇所の橋梁が存在します。2011年時点では、95本の貨物列車が運行しており、そのうち53本が積載量2万トン級の列車です。

春と秋には、大規模なメンテナンスのため、通電を停めて運休する期間が設けられています。春には25日から30日間、秋には15日から20日間、毎日3時間の運休が行われます。

貨物列車

大秦線では、大量の石炭を輸送するために長編成の貨物列車が運行されています。開業当初は、電気機関車1両と60トン積みの貨車51両で構成された、総重量4,284トン、石炭積載量3,060トンの貨物列車が導入されました。2004年以降導入されている積載量2万トンの貨物列車は、最大5両の電気機関車と216両の貨車で構成され、列車の総延長は2.6kmにも及びます。これらの機関車は、アメリカのGEが開発した無線操縦技術によって制御されており、最前部の機関車によって一括して運転が可能です。

車両

電気機関車

大秦線では、重量級の長大貨物列車に対応するため、2車体永久連結式の韶山4G型（SS4G型）、和諧1型（HXD1型）、和諧2型（HXD2型）電気機関車が使用されています。開業当初は、単機タイプの韶山3型が使用されていたほか、海外の技術を用いて製造されたDJ1型電気機関車も一時的に使用されていました。

貨車

石炭輸送には、無蓋車やホッパー式石炭車が使用されており、大秦線には最大積載量63トンのC63型、それ以上の積載量を持つC70型、C80型などの石炭車が導入されています。

関連項目

中華人民共和国の鉄道
鉄鉱石線：南アフリカ共和国の鉄鉱石輸送用貨物専用路線。大秦線と同様に、無線総括制御を用いた長大編成の貨物列車が運行しています。

参考資料

阿部真之、岡田健太郎『中国鉄道大全 中国鉄道10万km徹底ガイド』旅行人、2011年10月。ISBN 978-4947702692。
JICA (2002年10月). “大同・秦皇島間鉄道建設事業（１）（２）” (PDF). 2019年2月12日閲覧。
* 益山久男 (1997年4月). “中国における石炭の鉄道輸送の現状と展望” (PDF). doi:10.3775/jie.77.31. 2019年2月12日閲覧。

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