大觥吉男

大觥 吉男

大觥 吉男（たいこう よしお、本名：横山 吉男）は、1953年（昭和28年）10月30日に青森県青森市で生まれた元大相撲力士です。力士としては二子山部屋に籍を置き、自身が到達した最高位は1978年（昭和53年）7月場所における西前頭8枚目でした。現役時代の体格は身長174cm、体重133kgで、左四つからの寄りを得意手としていました。

来歴

建築業を営む家庭に、8人兄弟の末子として生を受けました。相撲界に身を投じることは、当初、本人の強い望む道ではありませんでした。しかし、青森県下のアマチュア相撲において強豪として知られ、東奥日報杯の一般部門で優勝経験を持つ長兄が、熱心に大相撲の世界へと進むことを勧めました。最終的にはご両親の反対をも押し切り、中学校在学中に二子山部屋への入門を決意します。

1968年（昭和43年）11月場所で初めて土俵を踏みました。この時の初土俵同期生には、後に小結へ昇進する青葉山や、前頭まで番付を上げた影虎といった力士たちがいます。入門前には相撲の経験が全くなかったため、相撲部屋特有の厳しい雰囲気や稽古に慣れるまでには、大変な苦労があったと伝えられています。

1969年（昭和44年）1月場所にて、「津軽岳」の四股名で序ノ口に番付されました。同年7月場所より「大觥」へと改名し、その後、本名の「横山」を名乗った時期もありましたが、幕下上位に定着してからは再び「大觥」の四股名に戻しています。

番付を順調に上げ、1975年（昭和50年）7月場所で新十両昇進を果たします。しかし、わずか2場所で幕下へ陥落してしまいます。それでも幕下上位で粘り強く相撲を取り続け、2年後の場所に再十両昇進を果たしました。1978年（昭和53年）3月場所では11勝4敗と大きく勝ち越し、見事に十両優勝を遂げました。この好成績を受けて、続く5月場所で新入幕を果たします。

念願の幕内に昇進したものの、僅か3場所で十両へ逆戻りとなります。その後、一度だけ幕内に復帰を遂げましたが、以降は十両の番付に留まることが多くなりました。1980年（昭和55年）1月場所では自身二度目となる十両優勝を飾りましたが、残念ながら幕内への再昇進は叶いませんでした。同年11月場所でついに幕下へ陥落し、この場所で全敗を喫したことを機に、27歳という若さで現役を引退することを決断しました。

相撲スタイル

ずんぐりとした体型でしたが、これを活かして低い重心から繰り出す相撲が特徴でした。特に左を深く差してからの寄り身には強い威力があり、相手を土俵際まで追い詰める力を持っていました。時には奇手である無双や、捻り技を見せることもありました。師匠である二子山親方（元横綱・初代若乃花）からは、立合いでの強い当たりから相手を突き放し、その後四つに組む相撲を指導されましたが、幕内では自身の得意とする左四つからの寄りが十分に通用せず、定着することが困難でした。

エピソード

「大觥」という四股名は、兄から角界入りを勧められた際、長兄が東京都内で経営していた建設会社、「大觥建設」に因んで付けられたものです。
現役時代のニックネームは「ノック」でした。これは本名が「横山」であったため、当時参議院議員としても活動していたタレントの横山ノック氏を連想して名付けられたと言われています。
後に相撲界を代表する大横綱となる千代の富士（後の九重親方）とは、大觥が平幕だった頃に二度対戦しています（1978年5月場所9日目、同年9月場所13日目）。この二番はいずれも敗れていますが、十両時代の1977年（昭和52年）7月場所では、一度だけ白星を挙げています（9日目）。
自身が新入幕を果たした1978年（昭和53年）5月場所の後、同じ二子山部屋に所属し、同郷でもある2代若乃花関が横綱に昇進しました。以降、大觥が幕内に在位した場所では、すべて2代若乃花の土俵入りの際に露払いを務めています。太刀持ちは、いずれの場所でも後の大関・隆の里関が務めました。
人前ではあまり多くを語らない、地味で無口な性格だったため、当時の報道陣は取材を行う際に苦労することが多かったようです。

主な戦績

現役在位：72場所
通算成績：350勝326敗4休（勝率.518）
幕内在位：4場所
幕内成績：24勝36敗（勝率.400）

各段優勝

十両優勝：2回（1978年3月場所、1980年1月場所）

廃業後

現役を引退した後は、故郷である青森県に戻り、相撲料理店「相撲茶屋 大觥」を開業し、経営に当たった時期もありました。しかし、現在は既に閉店しています。

参考文献

佐竹義惇『戦後新入幕力士物語 第4巻』（ベースボール・マガジン社、1993年、p290-p295）

関連項目

大相撲力士一覧
* 青森県出身の人物一覧

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