大谷智子

大谷智子：皇族から東本願寺の「お裏方」へ

大谷智子（おおたに さとこ）は、1906年に久邇宮邦彦王の第三王女として誕生しました。旧名は智子女王。1924年に東本願寺の法主、大谷光暢に降嫁し、以後、「お裏方」として、激動の時代を生き抜きました。

皇族としての生い立ち

智子女王は、久邇宮家で、姉の良子女王（後の香淳皇后）や信子女王と共に育ちました。姉宮たちを深く敬愛し、その一挙手一投足を真似るほどだったと言います。良子女王が皇太子妃に内定した際には、宮中某重大事件が起こり、家庭内が沈んでいたことを幼心に感じていたと、後に語っています。

東本願寺へ降嫁

12歳で、浄土真宗の宗祖親鸞の末裔である大谷家に嫁ぐことが決まり、京都へ移住。京都府立第一高等女学校を卒業後、1924年に大谷光暢と結婚。東本願寺では、盛大な祝賀が行われました。

「お裏方」としての活動

結婚の翌年、夫の父の負債により、光暢が急遽法主を継承。智子も法主夫人として、東本願寺を支える立場となりました。当時は、良妻賢母が求められる時代背景もあり、大谷夫人法話会で女性のあるべき姿を説きましたが、現代においては批判的な見方もあります。

中国での活動

1938年、夫の慰問に同行して中国を訪問。日中親善の機運が高まる中、現地の女性実業家・陳鮑蕙と出会い、仏教精神に基づく女子学校の設立を支援しました。これが北京覚生女子中等学校となり、智子は名誉校長に就任。日本と中国の文化交流、女子教育の発展に貢献しました。この学校は、西洋式のキリスト教系学校とは異なり、日本と中国の教育を取り入れ、多くの生徒を集めましたが、日本の敗戦により廃校となっています。

日本での教育活動

中国での活動を機に、京都に光華女子学園を設立。1940年に光華女子高等女学校を開校し、女子教育に力を注ぎました。また、大谷婦人会会長や全日本仏教婦人連盟初代会長を務め、仏教婦人運動の発展に尽力しました。

その他の活動

合唱グループ「大谷楽苑」を結成し、仏教音楽の普及にも努めました。また、短歌にも親しみ、約2000首の歌を残し、歌集も出版されています。

お東騒動

1960年代以降、大谷家と改革派との間で紛争（お東騒動）が起こると、四男・大谷暢道（後の光道）を支持し、この紛争に大きな影響を与えました。

晩年と死

1989年、83歳で逝去。その生涯は、皇族から東本願寺の「お裏方」へ、そして教育者、仏教婦人運動の指導者として、激動の時代を生き抜いた女性の姿を今に伝えます。

大谷智子の業績

中国における女子教育の支援
光華女子学園の設立
仏教婦人運動の推進
仏教音楽の普及
短歌の創作

著書

『光華抄』(1940年)
『光華のごとくに』(1969年)

関連書籍

『久邇宮智子女王殿下　東本願寺新法主台下　御慶事画報』(1924年)
『白萩の道 大谷智子歌集』(2007年)

参考文献

木場明志「日中戦争下北京における中国人女子高等教育の試み: 東本願寺系覚生女子中学校について」『真宗文化:真宗文化研究所年報』第8巻、1999年
* 女性自身編集部 編『昭和の母皇太后さま : 昭和天皇と歩まれた愛と激動の生涯 : 保存版』、2000年


大谷智子の生涯は、日本の皇族、仏教界、教育界に大きな足跡を残しました。彼女の多岐にわたる活動は、現代においても多くの示唆を与えてくれます。

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