大谷家

大谷家について

大谷家は、浄土真宗本願寺の法主（門主/門首）を世襲によって継承した、覚如（親鸞の曾孫）の子孫にあたる家です。親鸞を家祖とし、明治時代に名字必称義務化に伴い「大谷」を姓とする事で成立しました。大谷光尊（明如）以降の浄土真宗本願寺派の門主、及び大谷光勝（嚴如）以降の真宗大谷派の門首とその一族が、この姓を名乗っています。

本願寺は慶長7年（1602年）に東西に分立し、それぞれ「西本願寺」「東本願寺」と通称されるようになりました。これにより、大谷家も西本願寺系と東本願寺系の二つに分かれ、それぞれが異なる歴史を歩んでいます。維新後、東西両家ともに華族に列し、伯爵家となっています。

家紋

大谷家の家紋は、西本願寺大谷家と東本願寺大谷家で異なります。

西本願寺大谷家: 西六条八ツ藤紋、西六条藤（下り藤）を主に使用します。
東本願寺大谷家: 東六条八ツ藤紋、本願寺抱牡丹紋を主に使用します。

これらの家紋は、一般的な紋様とは異なり、独自のデザインが用いられています。

大谷姓の由来

大谷姓の由来は、親鸞の廟堂が京都東山知恩院北門の大谷の地に定められたことにあります。「大谷」の地には「豅」（ロウ）の字が当てられ、後に本願寺は「豅山」（おおたにざん）を山号としました。現在の西本願寺は「豅」の字を分け、「龍谷山本願寺」（りゅうこくざんほんがんじ）と号しています。龍谷大学の学名もこの由来に基づいています。

本願寺の歴史

本願寺は、戦国時代には一向一揆の広がりとともに、戦国大名に匹敵する勢力を持つようになりました。しかし、法主の法名や諱に「本願寺」を冠するのは、あくまで「本願寺の法主である〇〇」と明示するための表現であり、大谷家が「本願寺」を家の名字や姓としたわけではありません。彼らは仏弟子の名乗りとして「釈」を姓としていました。

廟堂から寺院へ

親鸞の遺骸は、1262年に京都東山の大谷に納められ、その後、吉水の北辺に改葬されました。1272年には「大谷廟堂」が建立され、覚信尼の長男である覚恵が留守職として管理を行いました。その後、留守職をめぐり覚恵の子である覚如と、覚恵の異父弟の唯善との間で争いが起こりましたが、覚如が勝利し、自己の家系による留守職の世襲を確立しました。1312年には、覚如によって廟堂が寺院化され、大谷本願寺が成立しました。

教団の拡大と戦国時代

覚如の子孫が継承した本願寺は、教団の形成を進め、室町時代には北陸地方へと進出しました。15世紀後半には、第8世蓮如の活動により本願寺教団は日本全国に広がりましたが、比叡山の弾圧などにより大谷本願寺は破却されました。蓮如は越前の吉崎、その後京都郊外の山科に移り、加賀では加賀一向一揆が起こり、「百姓の治める国」といわれる状況が生まれました。

16世紀に入ると、戦国時代の動乱の中で、本願寺教団は各地で勢力を拡大させ、山科本願寺は戦災により焼失。第10世証如は、石山本願寺を本拠地とし、諸大名や幕府、朝廷との関係を密にしました。しかし、証如の時代末期から、地方の本願寺教団では本願寺の統制を外れて独自路線を歩む動きも現れました。

織田信長との対立

第11代顕如の時代には、本願寺教団は事実上自立した大名権力となり、織田信長と対立しました。10年にわたる石山戦争は、本願寺が優勢に進めましたが、各地での敗北が重なり、1580年に信長に屈して石山本願寺を退去しました。

東西分裂

顕如の死後、長子教如と三男准如の間で後継者争いが起こり、1602年に徳川家康の仲介により教如は六条烏丸に寺地を与えられ、本願寺が東西に分裂しました。

公家化と華族

大谷家は、親鸞や覚恵の血統を引く家系であり、代々有力公家の猶子になる慣習や、公家との通婚を重ねることで、母系によっても公家化が進みました。明治維新後、両大谷家は華族に列し、伯爵を授けられました。

近代以降の大谷家と皇室・華族との関係

近代以降、大谷家は皇室や華族との間で盛んに通婚を行いました。以下にその例を挙げます。

浄土真宗本願寺派

光瑞（第22世鏡如） - 籌子（九条道孝3女、貞明皇后姉）
武子（第21世明如長女） - 九条良致（九条道孝5男）
光明（光瑞弟、光照父） - 紝子（九条道孝7女）
光照（第23世勝如） - 嬉子（徳大寺実厚長女）
正子（光明長女） - 近衛文隆（近衛文麿長男）

真宗大谷派

光勝（第21代嚴如） - 和子（伏見宮邦家親王4女）
恵子（第22代現如次女） - 九条道実（九条道孝長男）
光演（第23代彰如） - 章子（三条実美3女）
光暢（第24代闡如） - 智子（久邇宮邦彦王3女、香淳皇后妹）

浄土真宗東本願寺派

光紹（第25世） - 貴代子（真宗誠照寺派28世二條秀淳長女）

お東騒動

第二次世界大戦後、大谷派では東本願寺や宗門のあり方などを巡る対立から、お東騒動と呼ばれる内紛が発生し、東大谷家は事実上の分裂状態になっています。

参考文献

『新訂増補国史大系・尊卑分脉 第1篇』吉川弘文館
『新訂増補国史大系・尊卑分脉 第2篇』吉川弘文館
『新訂増補国史大系・尊卑分脉 第3篇』吉川弘文館
『新訂増補国史大系・尊卑分脉 第4篇』吉川弘文館
佐々木月樵 編『親鸞伝叢書』無我山房、1910年
高松信英、野田晋『親鸞聖人伝絵 -御伝鈔に学ぶ-』真宗大谷派宗務所出版部、1987年刊行
平雅行『歴史のなかに見る親鸞』法藏館、2011年4月。
平松令三『親鸞』古川弘文館〈歴史文化ライブラリー37〉、1998年4月。
同朋大学仏教文化研究所 編『誰も書かなかった親鸞-伝絵の真実』法藏館、2010年11月。

関連項目

お東騒動

外部リンク

藤原公定撰『新編纂図本朝尊卑分脈系譜雑類要集』（『尊卑分脈』）第4冊1頁「内麿公流」(2/60)（国立図書館・近代デジタルライブラリー）
佐々木月樵 編『親鸞伝叢書』「本願寺系図」(357/369)（国立図書館・近代デジタルライブラリー）
『本願寺系圖』（大坂本願寺本）（龍谷大学図書館 貴重書画像データベース）
本願寺の歴代宗主｜浄土真宗本願寺派 本願寺（西本願寺）

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