大道あや

大道あや：生命を描き続けた画家

大道あや（1909年4月11日 - 2010年9月14日）は、広島県出身の日本の画家、絵本作家です。本名は大道アヤコ。60歳から絵を描き始め、草花や動物など生命力に満ちた数百点の作品を残しました。

生涯

1909年、広島県安佐郡飯室村（現・広島市安佐北区）で、農業と太田川での船宿を営む丸木金助・スマの娘として生まれました。安田高等女学校（現・安田女子中学校・高等学校）を卒業後、結婚し広島市内で美容師として働いていました。

36歳の時、自宅があった広島市三滝町（現広島市西区）で被爆。爆心地から2.5キロの距離でした。父の金助も被爆し、翌年死去。戦後は家業の花火工場で働いていましたが、1967年には長男が花火工場の事故で負傷、翌年には夫を爆発事故で亡くすという悲劇に見舞われました。

深い悲しみに沈んでいたあやに、友人が絵を描くことを勧め、1969年、60歳にして初めて絵筆を取りました。1970年には、兄の丸木位里と俊夫妻が住む埼玉県東松山市へ転居。同年、作品《しかけ花火》が女流画家協会展に入選し、画家としての道を歩み始めます。その後、日本美術院展覧会への入選を重ね、院展院友、女流画家協会員となりました。

1975年からは絵本も手がけ、1976年には絵本『こえどまつり』（福音館書店）でブラティスラヴァ世界絵本原画展優良賞を受賞。1979年には、埼玉県越生町に、自身と母・丸木スマの絵を展示するオッペ美術館を開設しました。美術館近くの「けとばし山」と名付けた小さな山のふもとに暮らし、畑仕事の傍ら日本画や絵本を描き続けました。

作品の特徴

被爆画家と呼ばれることもありますが、あやの作品は、明るく、草花や動物など生命力に溢れたものがほとんどです。しかし、2000年には91歳にして最初で最後となる原爆の絵を9枚描いています。この作品以降、絵を描くことはありませんでした。

生前、あやは兄夫婦の描いた「原爆の図」に対し、「原爆はあんなもんじゃない」、「兄さんたちは見てないから描けるんだ」と批判的でした。原爆の図丸木美術館の学芸員は、あやによる「原爆の図」への本質的な批判が、「原爆の図」の神聖化を救ったという見解を示しています。

あやは自身の絵について、「犬やら猫やらがいて、いっぱい花が咲いてる絵を見たら、みんな『平和がええのう』と思うじゃろ」と語っており、原爆を描いた兄夫婦とは対照的に、平和を描くことで原爆を否定する姿勢を示しました。

2003年には広島に戻り、息子夫婦、孫たちと生活。2010年9月14日、心不全のため101歳で亡くなりました。遺骨は、広島の街を望む山の墓所に、母・スマ、兄・位里、俊らと共に埋葬されています。

年譜

1909年：広島県安佐郡飯室村（現・広島市）に生まれる。
1969年：60歳で絵を描き始める。
1970年：兄の丸木位里夫妻の住む埼玉県東松山市に移る。
1970年：「しかけ花火」が女流画家協会展に入選。
1975年：初めての絵本「ねこのごんごん」（福音館書店）を描く。
1976年：絵本「こえどまつり」（福音館書店）で世界絵本原画展・優良賞を受賞。
1979年：埼玉県越生町に、母の丸木スマとあや自身の絵を展示するオッペ美術館を開設。
2000年：91歳の時、最初で最後の原爆の絵を描く。これ以降創作活動は行なっていない。
2010年：9月14日、死去。101歳。

母スマと娘あや

母の丸木スマは、70歳を過ぎてから丸木位里・俊夫妻に勧められ絵を描き始め、「おばあちゃん画家」として知られるようになりました。一方、娘のあやは、画家たちに囲まれた環境にいながらも、自身が絵を描くとは考えていませんでした。しかし、60歳で絵筆を執ることになりました。母スマは、戦前は旧飯室村で船宿を営みながら畑仕事をする日々を送っていました。あやも、夫が花火工場を経営し、自身も美容師として多忙な日々を送っていました。あやが絵を描き始めた時には、母スマはすでに他界していました。

この二人の苦難の半生を経て絵筆を取った稀有な人生は、2008年9月7日にNHK日曜美術館で詩人アーサー・ビナードの進行で紹介されました。母スマの作品も素朴派として評価され、各地で展覧会が開催されています。

主な作品

しかけ花火
ねこのごんごん
こえどまつり

参考文献

小沢節子「丸木スマと大道あやの「絵画世界」」『原爆文学研究(原爆文学研究会編)』第8号、花書院、2009年、169-182頁。

関連項目

丸木スマ
丸木位里
丸木俊

外部リンク

大道あや - 絵本ナビ
大道あやコレクション 生きとし生けるものへの賛歌 - 祈りの丘絵本美術館

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