丸木スマ

丸木スマ：生涯と画業

生い立ちと結婚

丸木スマは、1875年（明治8年）に広島県で農家の娘として生まれました。幼い頃に母親を亡くし、叔母に育てられます。学校には行かず、読み書きを学びませんでしたが、自然の中で活発に成長しました。22歳で丸木金助と結婚し、船宿兼農家の家業を支えながら、3男1女を育てました。その中には、後に画家となる丸木位里と、同じく画家となった娘の大道あやがいます。

広島での被爆と転機

家業の衰退により、一家は広島市内に転居。1945年8月6日、広島への原爆投下時、スマは夫と共に被爆しました。幸い命は取り留めたものの、翌年に夫を亡くします。この出来事が、彼女が絵を描き始めるきっかけの一つとなりました。

画家としての開花

正確な時期は不明ですが、戦後間もなく、スマは墨を使って石に紙を押し付け、その形を足に見立てて絵を描くことを楽しんだと言います。また、メバルの絵を描いた際、その出来栄えが家族を驚かせたことから、本格的に絵を描き始めたとされています。70歳を超えてからの画業開始は、驚きをもって迎えられました。

1950年、女流画家協会展や広島県美術展に出品し、1951年には女流画家協会展で中央画材賞を受賞し会員となります。同年、日本美術院展にも初入選を果たし、画家としての地位を確立します。1952年には広島で初の個展を開催し、約130点の作品を展示。その評判は広島県知事も訪れるほどでした。その後も数々の展覧会で入選を重ね、院友に推挙されます。

画風と作品

スマの作品は、身近な動植物をモチーフにしたものが多く、その素朴で温かみのある画風が特徴です。被爆後の状況を描いた作品も残されており、彼女の人生経験が色濃く反映されています。丸木位里と赤松俊子（丸木俊）夫妻が制作した絵本『ピカドン』には、「おばあさん」としてスマが描かれました。また、絵本『ひろしまのピカ』には、スマの言葉がセリフとして使われています。

突然の死と遺されたもの

1956年、スマは東京の自宅で殺害されるという悲劇に見舞われます。犯人は自殺し、事件は未解決のまま終わりました。彼女の死後、遺作展が開催され、その作品は多くの人々に感動を与え、丸木俊がスマの意思を継ぎ、丸木姓を名乗るきっかけとなりました。

没後の評価と影響

没後もスマの作品は高く評価され、遺作展や企画展が多数開催されています。NHK「日曜美術館」などでも特集が組まれ、その生涯と作品は広く知られるようになりました。画集も出版され、後世に彼女の芸術を伝えています。2008年には、埼玉県立近代美術館で「丸木スマ展」が開催され、2017年、2021年にも美術館での個展が開催されました。彼女の作品は、今もなお、多くの人々の心に生き続けています。

主要な画集・図録

『丸木スマ画集』 大塔書店、1954年
『丸木スマ画集 花と人と生きものたち』 小学館、1984年
『丸木スマー樹・花・生きものを謳う』埼玉県立近代美術館、2008年

関連文献

丸木スマ「老いたる隠亡」『改造』1952年11月増刊号
河北倫明「丸木スマさんの絵」『Books』1954年10月号
丸木俊子『生々流転』実業之日本社、1958年
丸木俊『女絵かきの誕生』朝日新聞社、1977年

関連項目

素朴派
* 原爆の図丸木美術館

もう一度検索