大野川 (松本市)

大野川（おおのがわ）

長野県松本市安曇地区に位置する大野川は、乗鞍高原を中心とした地域です。この地域は、1874年に安曇村が発足した際、その構成4か村の一つでした。観光に強く依存する地域としての特徴を持ち、美しい自然と温泉、そして多様な宿泊施設が訪れる人々を魅了します。

地理と歴史

安曇地区と大野川

安曇地区は、北アルプスの山々に囲まれ、上高地や乗鞍高原を含む広大なエリアです。大野川は、その中でも乗鞍高原を中心とした地域を指します。1973年以降、「沢渡」「白骨」「上高地」「鈴蘭」といった地区が独立し、現在の大野川は乗鞍高原一帯の行政区域名として認識されています。1960年代中頃から、避暑を目的とした学生向けの民宿が始まり、それがスキー客向けの民宿へと発展しました。スキーブームとともにペンション経営も盛んになり、大野川の居住範囲は広域化し、観光に依拠した地域としての性格を強めていきました。

大野川集落の変遷

かつて大野川集落は、現在の県道沿いにある7つの集落の一つでした。特に、大野川と中平には家屋が密集しており、これを「親村」と呼んでいました。農耕をする人々は、農作業の時期になると出作小屋で生活し、冬にのみ集落に戻るという生活を送っていました。また、白骨温泉で宿を営む人々も、冬季には集落に戻っていました。しかし、明治時代以降、親村から離れる家が増え、特に戦後10年間で家屋の分散が進みました。これは、農耕地の近くに定住するようになったためです。大野川集落は、上村と下村に分かれており、下村は県道建設により分断され、現在は廃屋や屋敷跡が残るのみとなっています。

鎌倉街道

大野川には、かつて鎌倉街道が通っていました。この街道は、東は祠峠、西は檜峠へと向かい、大野川の親村を通っていました。鎌倉街道は、梓川沿いのＶ字型渓谷を避けて山中を通っており、土砂崩れによる被害が少なかったとされています。しかし、奈川渡ダムの完成により、旧鎌倉街道の一部はダムに水没し、現在はその面影を一部に残すのみとなっています。

大樋銀山

大野川には、かつて大樋銀山と呼ばれる鉱山がありました。ここでは主に鉛が産出されていましたが、微量の銀が含まれていたため、銀山の名が付けられたと考えられています。鉛は当時の軍需物資として重要でした。しかし、1707年の富士山宝永大噴火に伴う大地震により、鉱山は壊滅したと伝えられています。

観光と宿泊

宿泊施設

大野川には、民宿、ペンション、旅館、ホテル、プチホテル、山小屋など、様々なタイプの宿泊施設があります。多くが温泉を引湯しており、乗鞍高原観光案内所では、予約や問い合わせに対応しています。また、乗鞍高原温泉ユースホステルや休暇村乗鞍高原も利用できます。

食事と温泉

蕎麦店や喫茶店など、食事を楽しめる施設も多数あります。夏季限定の施設もありますので注意が必要です。日帰り入浴施設「湯けむり館」や、日帰り入浴が可能な宿泊施設も人気です。

道路事情

道路の変遷

1929年に前川渡経由で自動車が乗り入れ可能になり、1940年には鈴蘭まで村道が開通しました。1958年には乗鞍岳までの道路建設が始まり、1964年にはバスの運行が開始されました。1969年にはダム工事による付替道路が完成し、それまでの道路はダムに水没しました。

人口と遺跡

人口の推移

2012年1月1日時点での人口は、大野川地区が517人、鈴蘭地区が224人、白骨地区が78人、沢渡地区が75人、上高地地区が24人でした。近世から近代にかけて人口は変動しており、1968年には950人とピークを迎えましたが、その後減少傾向にあります。

遺跡

現在までに旧石器時代の遺跡は発見されていませんが、縄文時代から平安時代にかけての遺跡が複数発見されています。これらの遺跡は、当時この地域が交易路の中継基地として利用されていたことを示唆しています。

教育と交通

教育機関

大野川地区には、松本市立大野川小学校と松本市立大野川中学校があります。

公共交通機関

アルピコ交通上高地線新島々駅から、観光センター前（乗鞍高原）行きの路線バスが利用できます。所要時間は約40分から50分です。

観光スポット

主要観光地

乗鞍高原、いがやレクリエーションランド（夏季限定）、一ノ瀬園地、Mt.乗鞍スキー場、乗鞍高原いがやスキー場、白骨温泉、沢渡温泉、のりくら温泉郷などが人気の観光スポットです。特に、白骨温泉では8月8日に花火大会が開催されます。

まとめ

大野川は、豊かな自然と歴史、そして温泉が魅力の地域です。かつては集落が密集していましたが、時代の流れとともに分散し、現在は観光地として多くの人々を惹きつけています。大野川を訪れる際には、これらの情報を参考に、その魅力を存分に楽しんでください。

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