大関和七郎

大関和七郎（おおぜき わしちろう）は、江戸時代末期、激動の幕末に生きた水戸藩士です。彼は、桜田門外の変において井伊直弼を襲撃した桜田十八士の一人として、その名を歴史に刻みました。実兄に黒澤忠三郎、甥に広岡子之次郎がいることからも、彼の家系が水戸藩において一定の地位を占めていたことがうかがえます。

弘化3年（1846年）、和七郎は叔父である大関恒右衛門増賀の養子となり、150石の家督を相続しました。これは、彼が藩内で相応の家格を有していたことを示しています。安政2年（1855年）には馬廻組に任命され、安政5年（1858年）には大番組に編入されるなど、順調に藩士としてのキャリアを重ねていきました。

しかし、安政6年（1859年）に戊午の密勅が下されると、彼の人生は大きく転換します。兄の黒澤忠三郎と同じく、過激な尊王攘夷思想の持ち主であった和七郎は、密勅の返納に強く反対し、朝廷への奉勅を訴えました。この行動は、幕府の意向を重視する藩の保守派との対立を招き、彼は圧力を受けることとなります。

身の危険を感じた和七郎は、商人に変装し、酒泉好吉と名を変えて江戸に潜伏しました。しかし、彼の尊王攘夷への情熱は消えることなく、安政7年（1860年）3月3日、桜田門外の変において、ついにその行動として結実します。彼は同志たちと共に、大老・井伊直弼を襲撃し、討ち取ることに成功しました。

しかし、襲撃の際に負傷した和七郎は、逃亡を断念し、肥後熊本藩の江戸藩邸に自首しました。その後、越中富山藩邸、さらに但馬豊岡藩邸へと移送され、拘禁されることとなります。

文久元年（1861年）7月26日、幕府の評定において、和七郎に死罪が宣告され、斬首刑に処されました。享年26歳という若さでした。明治31年（1898年）には、その功績が認められ、正五位が追贈されました。

大関和七郎は、激動の幕末において、自らの信念に基づき行動した一人の藩士でした。彼の短い生涯は、尊王攘夷運動の激しさと、時代の大きなうねりを象徴していると言えるでしょう。

参考文献：
家臣人名事典編纂委員会編『三百藩家臣人名事典 (2)』 (新人物往来社、1988年) ISBN 4404014902

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