黒澤忠三郎

黒澤忠三郎

黒澤忠三郎（くろさわ ちゅうさぶろう）は、江戸時代末期、激動の幕末に生きた水戸藩士です。彼は、桜田門外の変において、大老・井伊直弼の暗殺計画に加わった「桜田十八士」の一人として、その名を歴史に刻みました。実弟には大関和七郎、甥には広岡子之次郎がいます。

生涯

水戸藩主である徳川斉昭・慶篤に仕え、嘉永6年（1853年）には庄机廻という役職に任命されました。翌嘉永7年（1854年）には江戸詰となり、一時帰国後、馬廻に任命されています。安政2年（1855年）には100石の家督を相続し、安政5年（1858年）には大番組に編入されました。

黒澤は、水戸藩内でも特に過激な尊王攘夷論者として知られていました。朝廷からの戊午の密勅が水戸藩に下された際には、この勅命を幕府に渡すことなく、朝廷の意向に従うべきだと強く主張しました。

安政の大獄によって水戸藩が幕府から厳しい処罰を受けたことに憤慨した黒澤は、同志とともに井伊直弼の暗殺を計画します。そして、安政7年（1860年）3月3日、桜田門外の変において、ついに井伊直弼を討ち取るという実行に至りました。

桜田門外の変の後

井伊直弼を討ち取った後、黒澤は自ら老中・脇坂安宅邸に出頭し、自首しました。その後、肥後熊本藩の細川氏のもとに身柄を預けられることになります。桜田門外の変に関する評定は、事件から2日後の3月5日に開始されましたが、黒澤の預け先はその後、越中富山藩の前田氏、摂津三田藩の九鬼氏と変更されました。そして、同年7月11日、三田藩邸において31歳という若さで死去しました。

公式記録では病死とされていますが、桜田門外の変の際に彦根藩士と激しく戦い、深手を負ったことが自首の理由とも言われています。そのため、実際にはこの時の傷が原因で命を落としたのではないかという説も存在します。

死後

明治35年（1902年）、黒澤忠三郎の功績が認められ、正五位が追贈されました。これは、彼の尊王攘夷に対する強い信念と、桜田門外の変における行動が、明治政府によって一定の評価を受けたことを示しています。

黒澤忠三郎は、短い生涯ではありましたが、幕末の動乱期において、自らの信念を貫き、歴史に名を残した人物として、今も語り継がれています。

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