天塩岳道立自然公園

天塩岳道立自然公園

北海道北部の士別市、上川郡下川町、そして紋別郡滝上町・西興部村にまたがる広大な区域に位置するのが、天塩岳道立自然公園です。この自然公園は、北見山地の盟主である天塩岳（てしおだけ）とその周辺に広がる渚滑岳（しょこつだけ）一帯、さらに北東部に独立してそびえるウエンシリ岳（うえんしりだけ）周辺の二つの地域に大きく分けられます。指定区域は道立自然公園として、北海道の豊かな自然環境を保護し、後世に伝える役割を担っています。

豊かな自然とそこに息づく生命

この公園の最大の魅力は、手つかずのまま保たれている多様な自然環境です。特に、北見山地最高峰として知られる天塩岳の山稜部には、厳しい気候に適応した数多くの高山植物が自生しています。中でも、鮮やかな黄色い花を咲かせるキバナシャクナゲの群落は訪れる人々を魅了します。また、この冷涼な山岳地帯は、かわいらしい姿で知られるナキウサギの貴重な生息地としても保護されています。彼らの独特の鳴き声は、静かな山に響き渡り、登山者に癒やしを与えてくれます。

一方、山麓に広がる森林地帯には、さらに多様な野生動物たちが生息しています。国の天然記念物にも指定されているクマゲラをはじめ、カラ類やキツツキ類など、さまざまな鳥たちのさえずりが森に響き渡ります。哺乳類では、賢く活動的なキタキツネや、北海道の森林生態系の頂点に立つヒグマなども姿を見せることがあり、この地域の自然が持つ奥深さを示しています。これらの動植物たちは、それぞれが互いに依存し合いながら、この公園の豊かな生態系を形作っています。

公園を構成するもう一つの主要な山であるウエンシリ岳も、植生の豊かさにおいて天塩岳に劣りません。山頂付近では、100種類を超えると言われるほど多種多様な高山植物が確認されており、季節ごとに異なる花々が咲き誇ります。この地もまた、固有の動植物が生息する貴重な環境です。

息をのむ山頂からの眺望

天塩岳とウエンシリ岳、それぞれの山頂からは、努力して登り詰めた者だけが見ることのできる素晴らしいパノラマが広がっています。天塩岳の頂からは、北海道の中央部に連なる大雪山の雄大な山々を望むことができ、その壮大なスケールに圧倒されます。さらに、空気が澄み渡った晴天の日には、遠く日本海に浮かぶ利尻島の象徴的な姿、利尻山を遠望することも可能です。ウエンシリ岳の山頂からもまた、晴れた日には眼下に広がるオホーツク海の青い輝きや、遠方に霞む大雪山系の山並みを望むことができます。これらの眺望は、訪れる人々に深い感動と自然の偉大さを改めて感じさせてくれます。

公園の利用を支える施設

天塩岳道立自然公園内には、登山者や自然愛好家が安心して活動するための施設も整備されています。主要なものとしては、士別市朝日町茂志利地区に設置されている天塩岳ヒュッテと、同じく茂志利地区にある天塩岳避難小屋があります。これらの施設は、長距離の登山ルートを安全に踏破するための休憩地点や緊急時の避難場所として重要な役割を果たしており、公園を訪れる人々の安全な利用を支えています。

天塩岳道立自然公園は、その名の通り、天塩岳を中心とした北見山地の豊かな自然を擁する地域であり、高山植物から大型哺乳類に至るまで多様な動植物の宝庫です。また、山頂からの広大な眺めは、この地を訪れる大きな理由の一つとなるでしょう。保護された自然の中で、登山や自然観察を通じて四季折々の美しい景観と野生の息吹を感じることができる、北海道が誇るべき自然公園の一つです。

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