天王寺 (台東区)

天王寺：歴史と変遷

東京都台東区谷中にある天王寺は、天台宗に属する寺院です。正式名称は護国山尊重院天王寺。古くは日蓮宗の寺院として栄え、江戸時代には富くじ興行で賑わいを見せた歴史を持つ一方、幾多の困難や変遷を経験してきました。

創建から日蓮宗時代

天王寺の起源は、日蓮聖人が鎌倉と安房を往復する際に、関小次郎長耀の屋敷に滞在したことに遡ります。関小次郎が日蓮聖人に帰依し草庵を結んだことが始まりとされ、その後、日蓮聖人の弟子である日源によって法華曼荼羅が勧請され、寺院が建立されました。

江戸時代初期、徳川家光、英勝院、春日局らの庇護を受け、広大な土地を拝領。将軍家の祈祷所としても機能するようになりました。この時代の唯一の記録として、日蓮宗9世・日長による『長耀山感応寺尊重院縁起』が残されています。しかし、日耀による中興以前の歴史は不明な点が多く残されています。

弾圧と改宗

開創以来、日蓮宗不受不施派に属していた天王寺は、江戸幕府による弾圧を受けました。1698年、日蓮宗15世日遼の代に強制的に天台宗への改宗を余儀なくされ、日蓮宗14世日饒、15世日遼は八丈島に流罪となりました。廃寺を憂いた輪王寺宮公弁法親王の尽力により、天台宗1世慶運大僧正が迎えられ、寺院は存続。本尊は毘沙門天像となりました。慶運大僧正はその後、善光寺を中興するなど、活躍しました。改宗に伴い、祖師像は瑞輪寺に移されました。

寺号改称と富くじ

1833年、日蓮宗への寺号改称運動が法華経寺の知泉院日啓らによって起こされましたが、輪王寺宮舜仁法親王の働きかけにより、日蓮宗への復帰は断念。「長耀山感応寺」から「護国山天王寺」へと改称されました。

江戸時代には、幕府公認の富くじ興行が行われ、「江戸の三富」の一つとして賑わいを見せました。1728年の富くじ禁止令後も、許可を得て興行が続けられましたが、1842年の天保の改革により、ついに禁止されました。

火災と戦災、そして現代

天王寺の歴史は、幾度もの火災や戦災と隣り合わせでした。明和の大火（1772年）では五重塔が焼失、彰義隊の兵火（1868年）では本坊などが焼失するなど、大きな被害を受けました。1957年には、谷中五重塔放火心中事件により、再建された五重塔も焼失するという悲劇に見舞われました。しかし、その都度再建・修復され、現在も人々の信仰を集めています。1979年には天台宗特別寺となりました。

文化財

天王寺は、数多くの文化財を所蔵しています。

絹本着色両界曼荼羅
絹本着色阿弥陀二十五菩薩来迎図
絹本着色天台大師画像
木造毘沙門天立像
銅造釈迦如来坐像
富興行関係資料

これらは全て台東区指定有形文化財に指定されています。

アクセス

天王寺へのアクセスは、JR山手線、京浜東北線、常磐線の日暮里駅、東京メトロ千代田線の千駄木駅、京成本線の日暮里駅から徒歩でアクセス可能です。また、谷中七福神の一つとしても知られており、周辺には多くの見所があります。

参考文献

斎藤長秋 編「卷之五 玉衡之部 長耀山感應寺」『江戸名所図会』 3巻、有朋堂書店〈有朋堂文庫〉、1927年

関連事項

谷中七福神
感応寺
幸田露伴『五重塔』
笠森稲荷
谷中霊園

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