天皇寺 (坂出市)

天皇寺：崇徳上皇ゆかりの歴史と霊験

香川県坂出市西庄町八十場にある天皇寺は、真言宗御室派の寺院で、四国八十八箇所霊場の第79番札所です。金華山を山号とし、高照院を号します。本尊は十一面観世音菩薩で、その霊験は古くから広く知られています。

歴史と伝承：霊水と空海の関わり

寺の創建は、古代、南海の大魚退治に向かった兵士たちが難を逃れたという「八十場（やそば）の霊水」の伝説にまで遡ります。天平年間には、行基が薬師如来を本尊とする堂宇を開創したと伝えられています。その後、空海（弘法大師）が八十場の泉を訪れ、金山権現の化身である天童から宝珠を授かり、寺を再興。摩尼珠院妙成就寺と名付け、十一面観音像などを安置したとされています。

平安時代には、保元の乱で敗れた崇徳上皇が、約6年間この地で幽閉され、長寛2年（1164年）に崩御しました。上皇の遺骸を霊泉に浸したところ、21日間も生前のままだったという伝説も残ります。上皇崩御の地には御廟が建てられ、後嵯峨天皇の宣旨により崇徳天皇社が再建されると、摩尼珠院はその別当職となり、崇徳院の永代供養を担うようになりました。人々は摩尼珠院を「天皇寺」と呼ぶようになり、崇徳天皇社は「天皇さん」と親しまれました。

明治維新後、明治天皇の宣旨により崇徳院御霊は京都へ戻り、崇徳天皇社は白峰宮と改名。神仏分離令により、摩尼珠院は一時廃寺となりましたが、明治20年（1887年）、現在の地に天皇寺高照院として再興されました。

見どころ：境内と周辺の史跡

天皇寺の境内には、崇徳天皇の名が刻まれた三輪鳥居をはじめ、本堂、大師堂、地蔵堂、金比羅祠、稲荷堂、本坊などがあります。本堂には、弘法大師作と伝わる十一面観音が胎内仏として納められていると言われています。境内には「衛士坊の坂」と呼ばれる坂道があり、かつて崇徳上皇を監視した衛士が通った道です。境内から少し離れた場所には、八十蘇場の清水や弥蘇場地蔵堂、奥の院である瑠璃光寺（金山薬師）なども存在します。また、廃寺となった北向き不動（城山不動滝）も関連する史跡として挙げられます。

周辺には、西国三十三所の写し石仏が並ぶ「崇徳天皇彌蘇場道」や、崇徳上皇が詠んだと伝わる銘木「岩根の桜」など、歴史的遺産が数多く残っています。

アクセスとその他

鉄道：JR四国予讃線 八十場駅より徒歩約0.4km
車：高松自動車道・瀬戸中央自動車道 坂出ICより約5.4km

駐車場は境内にあり、宿坊はありません。

天皇寺は、崇徳上皇ゆかりの歴史と、霊水にまつわる伝説、そして四国八十八箇所霊場としての役割を併せ持つ、歴史と霊験に満ちた寺院です。静かな境内を散策し、歴史に思いを馳せることができるでしょう。

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