洞山良价

洞山良价（とうざん りょうかい）

洞山良价は、中国唐代に活躍した禅僧であり、五家七宗の一つである曹洞宗の開祖として、その名を禅宗史に刻んでいます。諡号は悟本大師、俗姓は兪。越州諸曁県の出身です。

生涯

幼い頃から仏門に帰依した洞山良价は、村の寺院で学び始めました。早くからその才能は開花し、『般若心経』の解釈を師に問いただすなど、その鋭さを周囲に示しました。その後、五台山の高僧である五洩霊黙のもとで修行を重ね、21歳で正式に受戒しました。

さらに南泉普願、潙山霊祐といった名だたる禅僧に師事し、最後に雲巌曇晟に師事しました。雲巌曇晟からは、「三種滲漏」といった禅の奥義を伝授されたとされています。『人天眼目』によれば、この師弟関係は、洞山良价の禅思想形成に大きな影響を与えたと考えられています。

会昌の廃仏（843年-845年）の際には、大きな困難に見舞われることなく、その後の禅の発展に尽力しました。晩年には、江西省宜春市宜豊県の筠州洞山に禅の道場を開きました。当初は広福寺、功徳寺、崇先隆報寺などと称していましたが、宋代初頭以降、普利院と呼ばれるようになりました。この地で洞山は、彼の思想を凝縮したとされる『宝鏡三昧（宝鏡三昧歌）』を作りました。彼の門下には500人から1000人もの弟子が集まったと伝えられています。

思想と教え

洞山良价は、禅の教えを独自に体系化し、「正偏五位」と呼ばれる思想を提唱しました。これは、禅の境地を五つの段階に分けて示したもので、その後の禅宗に大きな影響を与えました。また、南陽慧忠の「無情説法」を追求する中で、川に映った自分の姿を見て悟りを開いたというエピソードは、「洞山過水」として禅画の画題にもなっています。

洞山良价の思想は、彼の語録である『洞山語録』に詳しく記録されています。この語録は、彼の禅の教えや思想を理解する上で重要な資料となっています。

曹洞宗の成立

洞山良价の高弟である曹山本寂は、師の教えを深く理解し、その発展に大きく貢献しました。曹洞宗という宗派の名前は、洞山良价の「洞」と、曹山本寂の「曹」から一字ずつ取って名付けられたとする説が一般的です。しかし、この説には異論もあり、宗派の成立に関する詳細は、現在も研究が進められています。

参考文献

* 椎名宏雄『洞山 臨済に並ぶ唐末の禅匠』「唐代の禅僧7」臨川書店、2010年

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