天龍寺 (新宿区)

天龍寺：新宿の喧騒に佇む歴史の静寂

天龍寺は、東京都新宿区新宿四丁目に位置する曹洞宗の寺院です。護本山を山号とし、新宿駅からもほど近い、周囲をビルに囲まれた立地ながら、古くからの歴史と文化を今に伝える由緒ある寺院です。

江戸時代からの歴史と役割

天龍寺の前身は、遠江国にあった法泉寺と伝えられています。法泉寺は、徳川家康の側室、西郷局（於愛の方）の父である戸塚忠春（戸田忠春とも）の菩提寺でした。西郷局が徳川秀忠を産んだ縁から、家康の江戸入府を機に、現在の新宿区牛込付近に移転、天龍寺と改名されました。寺名は、かつて法泉寺の近くに流れていた天竜川に由来するといわれています。

天和の大火（1683年）で焼失した後、現在の新宿四丁目交差点近くに再建されました。江戸城の鬼門を守る寛永寺に対して、天龍寺は裏鬼門の鎮護を担っていたとされています。そのため、江戸の街の守り神として、人々の信仰を集めてきました。

貴重な文化財：時の鐘とやぐら時計

天龍寺には、江戸時代から伝わる貴重な文化財がいくつか現存しています。その中でも特に有名なのが、「時の鐘」です。江戸三名鐘の一つに数えられ、元禄13年（1700年）、徳川綱吉の側用人であった牧野成貞の寄進によるものです。現在の鐘は3代目で、明和4年（1767年）に鋳造されました。

大晦日の除夜の鐘は、天龍寺の伝統行事として、今も多くの人々が訪れます。また、江戸の外れに位置していたことから、通常より早く鐘を鳴らし、「追出しの鐘」と呼ばれていたという興味深いエピソードも残されています。

もう一つの貴重な文化財が、「やぐら時計」です。これも牧野成貞の寄進によるもので、「時の鐘」を打つ時刻を知るための時計です。やぐら型の台の上に置かれ、上部には鐘、下部には歯車を回すための錘が備え付けられています。明治以降に文字盤が24時間制に改修された点も特徴です。時の鐘とやぐら時計はどちらも新宿区指定有形文化財（工芸品）に指定されています。

天龍寺の境内と周辺

天龍寺の境内は、渋谷川の源流の一つであり、かつては池があったと伝えられています。現在でも地下水が豊富であることから、その歴史を感じさせることができます。また、天龍寺のうしろ側、再開発前は山門があった側には、江戸時代には非人が住み、その後も簡易宿泊所などが立ち並ぶ地域でした。現在もその名残を偲ばせる建物が残っていることから、歴史の移り変わりを肌で感じることができる場所となっています。

アクセス

天龍寺は、新宿駅新南口、新宿三丁目駅から徒歩3分という好立地にあります。新宿の喧騒の中にありながら、静寂な境内は、都会のオアシスとして、訪れる人々に安らぎを与えてくれるでしょう。現代社会に生きる私たちにとって、天龍寺は歴史と伝統、そして安らぎを同時に享受できる貴重な場所と言えるでしょう。

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