太寿山忠明(だいじゅやま ただあき)は、1959年
4月8日、
新潟県新津市(現在の
新潟市秋葉区)に生まれました。本名を坂爪忠明といい、二子山部屋に所属した元
大相撲力士です。身長183cm、体重161kgという恵まれた体格を持ち、右四つ、
上手投げ、
うっちゃりを得意としていました。現役時代は、その朴訥とした風貌から「
ムーミン」という愛称で親しまれました。
柔道と相撲の出会い
入門前は、
柔道で初段の腕前を持つほどの実力者であり、中学時代は卓球のエースとしても活躍しました。相撲界との出会いは、父親の仕事関係者の紹介で、二子山親方(元
横綱・若乃花)にスカウトされたことがきっかけです。本人は相撲に興味がなかったものの、勉強嫌いだったこともあり、相撲界入りを決意したとされています。当時から体格が良かったため、「相撲はデブでもできるスポーツ」と安心したという逸話も残っています。
力士としての成長
1975年3月場所、15歳で
初土俵を踏みました。同期には、後に
大関となる若嶋津(当初の四股名は「日高」)や霧島がいます。若嶋津とは昇進を競い合い、
1980年1月場所で新
十両、同年9月場所で新入幕と、いずれも若嶋津より先行しました。
右四つを得意とし、腰の重さを活かした相撲で、新進気鋭の時期には大物食いとして活躍しました。特に、
横綱・北の湖には強く、対戦成績はほぼ互角の5勝6敗でした。
1981年秋場所では、西
前頭筆頭で北の湖を破り、初金星を挙げ、10勝5敗の好成績で翌場所には新
関脇に昇進しました。1982年秋場所では、初日に北の湖を吊り上げて勝利し、翌日には千代の富士を破るなど、連続で金星を挙げて初日から6連勝を飾るなど、将来を大いに期待されました。しかし、相撲が遅いという弱点から、
三役ではなかなか勝ち越すことができませんでした。
その後と引退
1983年3月場所で休場して以降は、勝ち越す場所が少なくなりました。しかし、
1988年1月場所で10勝5敗、翌3月場所で9勝6敗と
勝ち越し、5年2ヶ月ぶりに
三役に返り咲きました。同年5月場所では、西
小結で1
横綱2
大関を破る活躍を見せて8勝7敗と
勝ち越し、5年8ヶ月ぶりの敢闘賞を受賞。
1989年1月場所では、6年2ヶ月ぶりに
関脇へ復帰しました。故障が少なく、体にバンデージなどを貼ることはほとんどありませんでした。
1991年5月場所初日には、
幕内在位連続10年以上として理事長特別表彰を受けましたが、同場所では大きく
負け越し、
十両陥落が決定的となったため、千秋楽に現役引退を表明しました。
引退後
引退後は
年寄・
花籠を襲名し、1992年に
花籠部屋を創設しました。直弟子からは
幕内・光龍を育てました。
2012年5月場所後、経営上の理由で部屋を閉鎖し、
峰崎部屋に移籍。2021年には
峰崎部屋が閉鎖したため、
高田川部屋に移籍しました。
日本相撲協会では、
2008年3月場所から審判委員を務めましたが、弟子の不祥事により一時降格。その後、復帰し、
2014年には選挙管理委員長を務めました。
2020年には理事に初選任され、審判部長や
相撲教習所長も兼任しました。
2024年3月場所、停年を迎える前の最後の場所となり、引退から50年を振り返りました。
人物像とエピソード
朴訥とした風貌から「
ムーミン」と呼ばれ、親しまれた太寿山。幼少の頃から
柔道に打ち込みましたが、運動会が苦手だったという一面も持ち合わせていました。愛車はメルセデス・ベンツMクラスでした。北の湖には強かったものの、
大関には苦戦する傾向がありました。また、大食漢としても知られ、焼肉店で16人前を平らげたというエピソードもあります。
主な戦績
通算成績:585勝618敗28休
幕内成績:431勝501敗28休
現役在位:97場所
幕内在位:64場所
三役在位:7場所(関脇3場所、小結4場所)
三賞:4回(殊勲賞1回、敢闘賞3回)
金星:7個(北の湖4個、千代の富士3個)
改名歴
坂爪 忠明(
1975年5月場所-1976年11月場所)
大寿山 忠晴(1977年1月場所-1984年1月場所)
大寿山 忠明(1984年3月場所-1984年7月場所)
* 太寿山 忠明(1984年9月場所-
1991年5月場所)
太寿山忠明は、その愛されるキャラクターと、土俵での活躍で、多くの相撲ファンに記憶される
力士でした。