太田切川 (長野県)

太田切川（おおたぎりがわ）

太田切川は、長野県の駒ヶ根市と上伊那郡宮田村を流れる一級河川であり、天竜川水系に属しています。時には大田切川とも書かれます。この川は木曽山脈、特に中央アルプスの雪渓を水源としており、その水は伊那谷に供給されています。名称の由来でもある「田切」という地形は、この地域に特有の扇状地や急勾配の深い谷によって形成されたもので、特に太田切川はその中でも最大の規模を誇ります。

地理的特徴

太田切川は複数の支流、すなわち中御所川、北御所川、そして本谷といった川が合流した後に流れを東に向け、中央自動車道、JR飯田線、国道153号をくぐって最終的に天竜川に合流します。興味深い点として、太田切川が天竜川の流路を大きく押し出したため、合流点付近で天竜川が蛇行していることが挙げられます。

この川の源流部は花崗岩地帯に位置し、転がる石も花崗岩が多く、川岸の砂利は白っぽく見えます。河川の勾配は源流から黒川との合流点まで非常に急であり、その後も流れは次第に緩やかになっていきます。

太田切川は、常時流量が8.0立方メートル毎秒という比較的多い流量を持ち、降雨後の増水も迅速に起こります。この水は農業の灌漑用として広く利用され、さらに上水道用水の一部としても役立っています。また、上流では水力発電が行われており、新太田切発電所と中御所発電所の二か所が中部電力によって運営されています。

扇状地と歴史

太田切川が形成した扇状地は、左岸側では伊那市南端、右岸側では駒ヶ根市上穂沢川付近に広がっています。この扇状地が最大に広がったのは約14万年前であり、当時は中田切川をも飲み込み、現在の飯島町まで達していたと言われています。

また、太田切川はその流路の変遷とともに、古代には信濃国の諏訪郡と伊那郡の境界であったとされており、歴史的にも重要な位置を占めていました。時折、本流から分岐する小田切川が存在したこともありましたが、現在では高い堤防によって両岸が仕切られ、流路が一本に固定されています。

この川ではかつて洪水を防ぐ取り組みとして、アカマツの木を植えて川除林が形成されていた場所もありますが、1959年以降は伐採が進み水田に転用され、堤防の建設が行われて新たな開発が進められる観光地域へと変貌を遂げています。

水力発電

太田切川での水力発電は大正時代から始まり、最初に建設された太田切発電所は伊那電気鉄道によるものでした。元々、電力需要の増加に伴い、1913年に水利権が出願され、その後1921年に完成を見ました。現在でもこの発電所は中部電力の管理下にあり、新太田切発電所として活躍しています。

新太田切発電所は1958年に改修工事が始まり、1988年に完成を見たこの発電所では有効落差315メートル、最大出力1万4,000キロワットに達したため、地域の電力供給に大きく貢献しています。

また、中御所発電所も1973年から計画・建設が進められ、1978年に着工されたこの施設は厳しい自然条件の中で完成に至りました。これにより太田切川の水資源が最大限に活用されることとなり、地域のエネルギー供給において重要な役割を果たしています。

まとめ

太田切川は自然環境、人々の生活、そして地域の経済にとって欠かせない存在であり、今後もその役割が期待される川です。歴史的な背景とともに多様な利用が進んでいるこの川の素晴らしさを知ることは、地域を理解する鍵となるでしょう。

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