太陽系座標時

太陽系座標時（TCB）とは

太陽系座標時（TCB: Temps-coordonnée barycentrique）は、太陽系内の惑星、小惑星、彗星、惑星間宇宙船などの天体の軌道計算における独立変数として用いられる時間系です。これは、太陽系の共通重心と完全に同じ動きをする仮想の時計が刻む時間と定義されています。この時計は、太陽系の重力井戸の外にあるため、太陽やその他の天体の重力による時間の遅れの影響を受けません。

TCBの概要

TCBは、1991年に国際天文学連合（IAU）によって定義されました。これは、それまで使われていた太陽系力学時（TDB）の代替として考案されたものです。TCBは、従来の天文学的時間尺度とは異なり、一般相対性理論に基づいて厳密に定義されています。TCBと他の相対論的時間尺度との関係は、一般相対論的な計量テンソルによって規定されます。

TCBの基準系は、太陽系の重力ポテンシャルの影響を受けないため、地球表面の時計よりもわずかに速く進みます。具体的には、約1.550505×10−8（約490ミリ秒/年）の差が生じます。このため、TCBを用いた計算で使用される物理定数の値は、通常の物理定数の値と異なります。これは、時間の進み方の違いを考慮する必要があるためです。

TCBとTDB

TCBは、より正確な時間尺度を提供するものの、既存のソフトウェアをTDBからTCBに変更するのは大きな労力を要します。そのため、2002年時点でも、TDBが依然として使用されている状況が見られます。しかし、精密な天体計算においては、TCBの使用が推奨されています。

時間座標の指定方法

TCBの時間座標は、ユリウス通日とグレゴリオ暦を用いて指定されます。これは、地球の自転に基づく不均一な時間基準から引き継がれた慣習的な方法です。

TCBは、その前身である天体暦（ET）との連続性を保つため、ユリウス通日2443144.5（1977年1月1日0時）付近でETと一致するように設定されました。より正確には、TCBにおける1977年1月1日0時0分32.184秒は、国際原子時（TAI）における1977年1月1日0時0分0秒に正確に対応するように定義されています。この瞬間は、TAIに重力による時間遅延の補正が導入された瞬間でもあります。

まとめ

TCBは、一般相対性理論に基づいて定義された、精密な天体計算に不可欠な時間系です。太陽系重心と共動する仮想の時計が刻む時間であり、重力による影響を受けないため、正確な計算が可能になります。TCBの導入により、天文学的な計算の精度が大幅に向上しました。

脚注

[国際天文学連合]第21回総会勧告3 (1991)

関連項目

地心座標時 (TCG)
* 地球時

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