奉車都尉

奉車都尉（ほうしゃとい）

奉車都尉は、古代中国において皇帝の馬車を管理する重要な官職でした。前漢時代に設置され、皇帝の権威を象徴する乗り物を管理する役割から、その地位は単なる役職以上の意味を持っていました。

概要

奉車都尉は、紀元前2世紀の前漢時代、武帝の時代に初めて設置されました。官秩は比二千石とされ、これは俸禄の等級を示すもので、決して低いものではありませんでした。職務内容は皇帝が使用する馬車の管理に限定されていましたが、皇帝の乗り物であることから非常に重要な役職と認識されていました。

後漢時代にも奉車都尉は存在し、比二千石の官秩が与えられました。定員は一定していなかったようです。

歴史

前漢の武帝は、国家の制度を整備する中で、奉車都尉を設置しました。この役職には、霍去病や霍光といった武帝に個人的に信頼された人物の子弟が任命されることが多かったようです。これは、単に馬車の管理能力だけでなく、皇帝に対する忠誠心が重視されたことを示唆しています。

蘇嘉という人物は、武帝に仕えていた際に馬車を破損した責任を取り自殺したという逸話が残っています。これは、奉車都尉の職務がどれほど重要視されていたかを物語るエピソードと言えるでしょう。

歴代の奉車都尉

奉車都尉には、以下の人物が任命されています。

前漢

霍嬗（かくせん）: 武帝の元封元年（紀元前110年）に死去。
霍光（かくこう）: 武帝の後元2年（紀元前87年）6月に任命、同年2月まで。
蘇嘉（そか）: 武帝の時代。
金賞（きんしょう）: 昭帝の時代。
金弘（きんこう）: 宣帝の時代。
霍山（かくさん）: 宣帝の地節2年（紀元前68年）以前に任命、4年（紀元前66年）に免職。
金敞（きんしょう）: 成帝の即位後（紀元前33年）に任命、河平4年（紀元前25年）まで。
班伯（はんぱく）: 成帝の時代。
金渉（きんしょう）: 哀帝の即位直後。
劉歆（りゅうきん）: 哀帝の時代。
甄邯（しんかん）: 平帝の元寿2年（紀元前1年）に任命、元始元年（1年）まで。

考察

奉車都尉は、単なる馬車の管理者ではなく、皇帝の権威を象徴する存在でした。そのため、その地位には皇帝からの信頼が厚い人物の子弟が選ばれる傾向にありました。この事実は、古代中国の官僚制度において、能力だけでなく家柄や人脈が重要視されていたことを示唆しています。

参考文献

班固著、『漢書』
小竹武夫訳『漢書』1から8、筑摩書房、ちくま学芸文庫、1998年。
大庭脩監修、漢書百官公卿表研究会『『漢書』百官公卿表訳注』、朋友書店、2014年。
司馬彪『続漢書』（范曄『後漢書』に合わさる）
渡邉義浩訳、劉昭注『後漢書』志一、二（早稲田文庫）、早稲田大学出版部、2023年、2024年。

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