奥村永福

奥村永福（おくむら ながとみ）

戦国時代後期から江戸時代初期にかけて活躍した武将。加賀藩主前田家の宿老として知られ、筆頭年寄も務めた。通称は助十郎、後に助右衛門と称した。別名には家福があり、官位は伊予守。快心と号した。漫画作品の影響から「奥村助右衛門」の名でも広く認識されている。

生涯

前田家への仕官と独立

天文10年（1541年）、尾張国中島郡（現在の愛知県一宮市周辺）に生まれた。奥村家は代々前田家に仕える家系であり、永福も幼少より前田利家の父である利春（または利昌）、そしてその跡を継いだ兄の利久に仕えた。

しかし、永禄12年（1569年）、織田信長の意向により前田家の家督が兄・利久から弟・利家へ譲られることになった際、荒子城代を務めていた永福は、主君である利久の明確な指示なしには城を明け渡せないとして抵抗する。最終的に利久からの明け渡し命令が下されると、永福は前田家を出て一時的に浪人生活を送った。

帰参と武功

天正元年（1573年）、織田氏による越前国への侵攻が始まると、永福は前田家に帰参する。その後、柴田勝家の与力となった前田利家に従い、朝倉氏攻めなど各地を転戦し、その武功を重ねた。

末森城の戦い

主君・利家が加賀国へ領地を得た後、永福は要衝である末森城（現在の石川県宝達志水町）の守将を任される。天正12年（1584年）、羽柴秀吉（後の豊臣秀吉）に属した利家に対し、越中国の佐々成政が約1万5千の大軍を率いて末森城を攻め寄せた（末森城の戦い）。永福は寡兵ながらも徹底抗戦し、二の丸まで攻め込まれる窮地に立たされながらも、前田利家の援軍が到着するまで城を守り抜くことに成功し、成政軍を撃退した。この籠城戦の際、永福の妻である安（つね、加藤氏の娘）は、薙刀を手に城内を巡回し、負傷した兵に粥を振る舞い介抱するなど、兵たちの士気を鼓舞したと伝えられている。

前田家重臣としての貢献

末森城での功績以降も、永福は前田家の重臣として、村井長頼らと共に加賀前田藩の基礎固めに尽力した。その貢献が認められ、時期は定かではないが、豊臣秀吉から豊臣姓を下賜されたこともあったという。九州征伐や小田原征伐といった主要な合戦にも参加し、前田軍の一翼を担った。

晩年と隠居

主君・前田利家が死去すると、永福はいったん隠居して出家した。しかし、次代藩主である前田利長の要請を受けて再び政務に復帰。さらに、利長の跡を継いだ前田利常の下でも、家中の要職である筆頭年寄を務めた。慶長16年（1611年）には老齢を理由に再び隠居したが、大坂の陣に際しては、金沢城代として留守を預かる重要な役目を果たした。

寛永元年（1624年）、永福は84歳でその生涯を閉じた。法名は永福院殿快心宗活居士。墓所は石川県金沢市にある永福寺にあり、寺には肖像画も所蔵されている。

逸話と子孫

永福の三男である栄頼は、藩主・前田利常からの信任が厚かったものの、大坂冬の陣での真田信繁相手の敗戦を機に面目を失い、また政敵であった横山長知の帰参に不満を抱き、加賀藩を退去しようとした。この時、兄たちや栄頼と親交の深かった本多政重ら、万石以上の禄高を持つ多くの家臣が栄頼に殉じてともに出奔しようとする騒動が起こった。永福はこれを知ると、彼らを懸命に説得し、最終的に栄頼一人の出奔に留めることで、前田家中の深刻な混乱を最小限に食い止めたと『加賀藩史料』には記されている。

永福の子孫は、江戸時代に加賀藩の家老職を代々務め、加賀八家と呼ばれる家系の一つを担うなど、藩政において重きをなした。江戸時代末期の子孫には、祖父の通称である奥村助右衛門の名を襲名した者もいたといわれる。

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