女子短期大学

女子短期大学（女子短大）は、女性を対象とした教育機関であり、原則として女性のみが入学を許可される短期大学です。

戦前、女性は主に家庭を守る役割を担うことが期待されており、当時の女子教育機関、例えば高等女学校や旧制女子専門学校では家政学を中心に教えていました。大妻高等女学校や実践女子専門学校といった学校がその代表例ですが、中には日本女子大学校（現日本女子大学）や女子英學塾（後の津田英学塾）のように、家政学に加え国文学や外国語などの専門分野を教育する学校も存在しました。

第二次世界大戦後の教育改革を経て、1950年に短期大学制度が発足しました。これに合わせて、旧制女子専門学校を前身とするものも含め、多数の女子短期大学が開学します。これは、戦前まで制限されていた女性への高等教育の門戸を広げ、教育内容を見直すという目的の一環でした。当時の社会情勢を反映し、女性が20代半ばまでに結婚することが多かったため、学科構成は家政学や人文科学系が中心となり、女子短期大学は多くの女性にとって身近な進学先として定着しました。発足当初149校あった短期大学のうち、約3分の1が旧制女子専門学校を前身としています。

短期大学発足当初の1950年頃は男子学生数が女子学生数を上回っていましたが、1954年には短期大学全体で女子学生数が逆転します。これは、当初社会科学や工業系学科に学生が集中していたのが、その後家政系分野へ学生が流入したためです。1950年代前半の短期大学は、来る高度経済成長期を控え、中堅技術者や職業人の養成機関として、また女子高等教育機関としての双方の役割が期待されていました。

新学制の下、1947年以降は男女共修が進められましたが、教育内容は性別役割分業の影響を強く受けていました。高校の職業科における家庭科教育や、進路選択（男子は農業・工業・水産、女子は商業・看護など）の傾向、そして女子短期大学の存在は、結果的に性別に基づく役割分担を固定化する一因になったと言われています。

高度経済成長期から安定成長期にかけて、女性の雇用形態は結婚までの間や補助的な業務を前提とするものが主流でした。この時代には、四年制大学卒よりも短期大学卒の方が企業からの推薦枠が多く、特に一般事務職への就職に有利だったため、女子学生の就職率は短期大学の方が高い状況でした。逆に四年制大学卒の場合、就職先は教育職か公務員などに限られる傾向がありました。1968年には女子学生数が男子学生数の約4.5倍に増加し、新設された多くの私立短期大学が女子短期大学として開学しました。

1980年代前半まで、教員などを除く多くの女子短期大学卒業生は、民間企業、特に大企業の一般事務職へ就職しました。1985年に男女雇用機会均等法が施行され、一般職と総合職という区分ができると、一般職に就職しやすい女子短期大学や女子大学はさらに人気を集め、バブル期には女子の主要な進学先となります。1993年には学校数と女子学生数、そして1994年には女子の短大進学率がピークを迎えました。

しかし、バブル経済が崩壊し平成不況に入ると、状況は一変します。企業の経費削減や、1996年の労働者派遣法改正による派遣社員の増加などにより、一般事務職の需要が減少しました。特に大企業では男女の区別なく総合職採用が中心となり、一般職を廃止する動きが見られました。これにより、女子短期大学の人気は低迷し、学生数は減少を続け、近年では東京都内の有力校を含む多くの女子短期大学が学生募集を停止・廃止しています。共学化や同一学校法人内の四年制大学への統合といった再編も多く行われています。

教育内容も時代とともに変化しており、かつて盛んだった英文学や国文学から、家政学の流れを汲む生活科学、そして保育士の育成を目的とした保育学など、より実践的・専門的な分野に重点を置く学校が増えています。女子短期大学は、戦後の女性高等教育の普及と社会進出に大きな役割を果たしましたが、社会構造や雇用環境の変化の中で、そのあり方が問われています。

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