妖艶毒婦伝 お勝兇状旅

『妖艶毒婦伝 お勝兇状旅』

1969年に公開された中川信夫監督による時代劇映画です。東映東京撮影所で製作され、配給は東映が担当しました。カラー、シネマスコープで、上映時間は1時間24分です。アメリカでは『Legends Of The Poisonous Seductress: Okatsu The Fugitive』という英語題名でDVDが発売されています。

概要

本作は、宮園純子主演の『妖艶毒婦伝』シリーズの3作目であり、最終作にあたります。シリーズ1作目ではヒロインの名前は「お百」でしたが、2作目からは「お勝」に変わりました。ただし、各作品のストーリーに直接的なつながりはありません。中川信夫監督は、この年、本作を含め3本の劇場用映画を手掛け、その活躍ぶりは「大いに気を吐く」と評されました。この言葉は、中川監督がかつて失意の中にいた時に贈られた言葉が元になっています。中川監督は生涯この言葉を「反省の鞭」としたそうです。

強姦シーンにおける演出について、脚本家の桂千穂は宮園純子の表情だけでマゾヒズムを表現した点を評価しましたが、中川監督自身は作品の出来に不満を示していました。一方で、前作における俯瞰の移動撮影は、東映首脳部を驚かせたとされています。中川監督は、そのショット以外は「ゼロだ」と語ったそうです。

本作を最後に、中川監督はテレビドラマに活動の場を移し、劇場映画は遺作となるATG作品まで携わることはありませんでした。そのため、本作は中川監督にとって最後の邦画メジャー作品となりました。

あらすじ

時は1841年、上州沼田藩で悪事が横行していました。側用人・田代重太夫は、御用商人と結託し、煙草を密売していました。密造に関わった人々は、用済みになると虐殺され、逆らう者は拷問を受けるという有様でした。藩の危機を案じた藩士たちは、田代の悪事を訴えるため、罪状書を江戸詰の大納戸役・真壁主計に託しました。しかし、田代は悪事が露見することを恐れ、真壁一家を拉致し、拷問の末に殺害してしまいます。

両親を殺され、自身も辱められた真壁の娘・お勝は、復讐を誓います。お勝は、甲源一刀流の師匠や婚約者にも裏切られ、絶望の中で復讐を誓います。町人姿に変装し、沼田へ向かう田代を追跡します。関所を越えることが困難なお勝は、宿場の人足たちを色仕掛けで籠絡し、関所破りを試みますが、田代の手先となった婚約者に襲撃され、負傷します。そこへ、かつて藩を追放された浪人・犬神隼人が現れ、お勝を助けます。犬神の協力を得て、お勝は田代を追い詰め、一味を皆殺しにして復讐を遂げるのでした。

スタッフ

監督: 中川信夫
企画: 扇沢要、安斎昭夫
原案: 高橋猛
脚本: 高田宏治、山本英明
撮影: 山沢義一
美術: 藤田博
照明: 元持秀雄
録音: 小松忠之
音楽: 河辺公一
主題歌: 『白刃恋唄』（作詞＝黒田喜之、作曲＝茅正人、唄＝宮園純子）
編集: 長沢嘉樹

キャスト

真壁勝（お勝）: 宮園純子
犬神隼人: 梅宮辰夫
真壁主計: 河野秋武
真壁さわ: 南風夕子
田代重太夫: 伊藤久哉
三上新三郎: 北上弥太朗
出雲邦典: 名和宏
島田屋庄左衛門: 安部徹
沖野大膳: 沼田曜一
お京: 沢淑子
かおる: 大信田礼子
お袖: 本多幸子
お浪: 花柳幻舟
平田帯刀: 沢彰謙
西川甲蔵: 中島信義
岩崎左内: 伊達弘
榊藤兵衛: 伊達正三郎
権: 日尾孝司
安: 佐藤晟也
辰: 須賀良
源六: 鈴木やすし

参考文献

滝沢一・山根貞男編『映画監督 中川信夫』、リブロポート、1987年 ISBN 4845702525
『インタビュー 全自作を語る』、中川信夫、聞き手桂千穂、同書、p.220.
『人間・中川信夫 職人・中川信夫』、滝沢一、同書、p.283.
『自分史・わが心の自叙伝』、中川信夫、同書、p.25.
『中川信夫・フィルモグラフィー』、作成＝鈴木健介、同書、p.253.
『中川信夫・年譜』、作成＝鈴木健介、同書、p.274.

外部リンク

妖艶毒婦伝 お勝兇状旅 - allcinema
妖艶毒婦伝 お勝兇状旅 - KINENOTE
* 妖艶毒婦伝 お勝兇状旅 - IMDb（英語）

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