娘からの宿題

『娘からの宿題』

『娘からの宿題』は、作家・長尾クニ子（1939年 - 2004年）が自身の経験を基に綴った手記形式の小説作品です。また、この小説を原作として、二度にわたりテレビドラマ化され、大きな反響を呼びました。

小説の背景と内容

物語の始まりは、昭和57年（1982年）6月7日。愛媛県でパン店を経営していた主婦である長尾クニ子さんのもとに、神戸市内の会社で働いていた娘の恭子さんが交通事故に遭い、病院へ搬送されたという知らせが届きます。

駆けつけた長尾さんは、娘さんの容体が非常に悪いと感じ、必死に医師に訴えかけますが、その声は十分に聞き入れられませんでした。その後、娘さんの容体は急速に悪化し、より高度な救命救急センターへ緊急転送されて手術が行われましたが、集中治療にもかかわらず、娘さんは約2週間の入院の末に亡くなってしまいます。

娘さんの死が単なる交通事故として処理されようとする状況に対し、長尾さんは医療現場での対応に疑問を抱き、娘の死因を徹底的に追及することを決意します。そして、約3年半にも及ぶ厳しい救急医療裁判を一人で闘い抜いたのです。

この小説は、愛する娘の死の真相を求め、医療の壁に立ち向かった一人の母親の壮絶な闘いを克明に記録したものです。著者は後に「医療と裁判を考える会」の代表も務め、同様の問題に直面した人々の支援にも力を尽くしました。

小説『娘からの宿題』は、1988年に草思社から出版され、その衝撃的な内容と、医療現場における患者や家族への向き合い方について社会的な議論を呼び起こし、大きな話題となりました。

テレビドラマ化

小説の出版後、その反響を受けて『娘からの宿題』はテレビドラマとして映像化されました。二つの異なるバージョンが制作されています。

1990年版

放送: 1990年9月20日
放送枠: 日本テレビ系列「木曜ゴールデンドラマ」
制作: 読売テレビ（YTV）
キャスト（主な出演者）:
池内淳子
川谷拓三
中村あずさ
江戸家猫八
西田健
原田大二郎
高瀬春奈
沖田浩之
桜むつ子
三谷昇
佐々木勝彦
スタッフ:
脚本 - 水島総
演出 - 上野隆

1993年版

放送: 1993年8月2日〜10月1日（全45話）
放送枠: TBS系列「ドラマ30」
制作: 中部日本放送（CBC）、総合ビジョン
キャスト（主な出演者）:
山本陽子
有川まゆ
長澤ユキオ
小坂一也
草見潤平
田中優樹
山口充
織本順吉
真実一路
松橋登
駒塚由衣
山田辰夫
石田太郎
田島令子
鈴木美恵
天園祥子
神田紫
五月晴子
でんでん
水島涼太
春木みさよ
田崎ますみ
津村鷹志
佐藤幸雄
地井武男
川村美恵
一瀬千絵
スタッフ:
脚本 - 水谷龍二
演出 - 清水満、九鬼通夫
音楽 - 坂田晃一
制作 - 渋谷康生、山本恵三
主題歌:
『縦縞のシャツを着て』
* 歌 - 秋本祐子（作詞・作曲：小椋佳、編曲：千代正行）

これらのドラマ化作品は、小説が提起した医療問題への関心をさらに広げ、多くの視聴者に感動と問いかけを与えました。

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