学童保育

学童保育とは

学童保育（放課後児童クラブ）は、保護者が日中不在となる小学生を対象に、放課後の時間帯に適切な遊びや生活の場を提供する事業です。子どもたちの健全な育成を目的とし、安全な環境下で、自主性や社会性を育むことを目指しています。共働き家庭の増加や核家族化が進む現代社会において、学童保育は重要な役割を担っています。

学童保育の目的と役割

学童保育は、単に子どもを預かるだけでなく、子どもたちが放課後を主体的に過ごし、成長できるような環境を提供することを目的としています。具体的な役割としては、以下の点が挙げられます。

安全な居場所の提供: 保護者が仕事などで不在の間、子どもたちが安心して過ごせる場所を提供します。
遊びと学びの機会の提供: 遊びを通して自主性や社会性を育み、宿題や学習のサポートも行います。
生活習慣の育成: おやつや食事の提供、生活ルールを守る習慣を身につけられるようにサポートします。
保護者支援: 保護者と連携し、子育てに関する情報交換や相談に対応します。

日本の学童保育の現状

日本では、学童保育は「放課後児童健全育成事業」として児童福祉法に定められています。所管官庁はこども家庭庁と文部科学省であり、施設は「放課後児童クラブ」「学童クラブ」「学童保育所」など様々な名称で呼ばれています。

法的根拠

学童保育は児童福祉法に基づき設置・運営されており、国の補助金も交付されています。1998年に法制化され、当初は「おおむね10歳未満」の児童が対象でしたが、法改正により現在は小学校6年生まで利用できるようになっています。

施設の形態

学童保育の施設は、設置主体や運営形態によって以下の3つに大別されます。

公設公営: 自治体が直接運営する施設。
公設民営: 自治体が施設を設置し、運営を民間事業者に委託する施設。
民設民営: 民間事業者が設置・運営する施設。

最も多いのは公設公営ですが、近年は公設民営が増加傾向にあります。また、民間企業による参入も進んでいます。

利用状況と課題

2023年時点で、全国の学童保育の登録児童数は151万人を超えていますが、一方で1万8千人以上の待機児童が存在します。施設数や受け入れ児童数の拡大が急務となっています。また、支援員の待遇改善や、施設運営の安定化なども課題として挙げられます。

学童保育の具体的な活動内容

学童保育では、子どもたちが安全に楽しく過ごせるよう、様々な活動が行われています。主な活動内容は以下の通りです。

遊び: 外遊び、室内遊び、集団遊びなど、様々な遊びを通して子どもたちの創造性や社会性を育みます。
学習: 宿題や自主学習のサポートを行い、学びの習慣を身につけられるようにします。
おやつ: 補食としておやつを提供し、食に関する指導も行います。
行事: 季節ごとのイベントや誕生日会、地域交流など、様々な行事を通して子どもたちの成長を促します。
生活指導: 生活習慣やルールを教え、社会性を育みます。

学童保育を支える人材

学童保育では、専門的な知識と経験を持つ「放課後児童支援員」が中心となって、子どもたちの保育にあたっています。放課後児童支援員は、都道府県知事の認定資格を持ち、研修を修了する必要があります。また、補助員も配置され、チームで子どもたちの成長をサポートしています。

放課後児童支援員の資格要件

放課後児童支援員になるには、以下のいずれかの要件を満たし、都道府県知事が実施する研修を修了する必要があります。

保育士資格
社会[[福祉士]]資格
高等学校卒業以上で2年以上の児童福祉事業従事経験
教育職員免許状
大学で社会[[福祉学]]、心理学、教育学などを専攻し卒業

支援員の待遇

学童保育の支援員の待遇は、一般的に低い水準にとどまっており、離職率が高いことが課題となっています。処遇改善のため、国や自治体による支援策が講じられています。

学童保育の課題と今後の展望

学童保育は、子どもたちの成長と保護者の就労を支える上で重要な役割を担っていますが、以下のような課題も抱えています。

待機児童の解消
支援員の待遇改善
施設運営の安定化
多様なニーズへの対応

これらの課題を解決するために、国や自治体、関係機関が連携し、学童保育の質の向上と拡充に取り組むことが求められています。

欧米の学童保育

欧米では、学童保育は教育の一環として捉えられ、学校内に設置されていることが多いです。イギリスでは「拡大学校」として、教育効果を高めるための学習支援やクラブ活動も行われています。フランスでは、余暇センターを利用して、長期休暇中も子どもたちが安全に過ごせるよう配慮されています。アメリカでは、貧困層の多い地域を中心に、放課後活動への補助金が交付されています。

学童保育の歴史

学童保育は、第二次世界大戦以前から、共働き家庭の自主的な活動として始まりました。高度経済成長期には、核家族化や共働き家庭の増加に伴い、そのニーズが高まり、1998年に児童福祉法に基づく事業として法制化されました。

年表

1904年: 兵庫県で幼児と児童を預かる活動が始まる。
1928年: 大阪府で学童保護部が設置される。
1960年代: 各地の関係者が組織化し、制度化を求める活動が本格化。
1963年: 東京都渋谷区が公設公営の学童保育施設を設置。
1998年: 児童福祉法に基づき放課後児童健全育成事業として法制化。
2015年: 放課後児童支援員の制度が開始。

関連法規

学童保育に関連する主な法律、省令、通知は以下の通りです。

児童福祉法
社会[[福祉法]]
子ども・子育て支援法
児童福祉施設の設備及び運営に関する基準
放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準
* 放課後児童健全育成事業の実施について

これらの法規に基づき、学童保育の運営や支援員の資格要件などが定められています。

まとめ

学童保育は、子どもたちの健全な育成を支える重要な社会インフラです。今後ますます需要が高まることが予想されるため、質の高いサービスを提供できるよう、様々な課題解決に向けて取り組んでいく必要があります。

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