宇佐美灊水

宇佐美灊水（うさみ しんすい）

宇佐美灊水は、宝永7年（1710年）に生まれ、安永5年（1776年）に没した江戸時代中期の儒学者です。本名は恵、字は子迪、通称は恵助といい、灊水と号しました。父は宇佐美習翁です。

生涯

灊水は上総国夷隅郡長者町（現在の千葉県いすみ市）で生まれました。彼の号である「灊水」は、出身地である夷隅が「夷灊」とも表記され、夷隅川が「灊水」と呼ばれていたことに由来すると言われています。

学問を好む父親の影響を受け、17歳で江戸に出て荻生徂徠の門人となりました。しかし、3年後に徂徠が亡くなったため、太宰春台、大内熊耳、板倉帆邱といった兄弟子や友人らの指導を受けながら、研究を続けました。徂徠の晩年の門人でありながら、その遺著の刊行に尽力したことは特筆され、門人たちからも一目置かれる存在でした。

一度、板倉帆邱を伴って上総に帰郷した後、再び江戸に出て私塾を開きました。上総にいた頃、徂徠の弟である荻生北渓が山井崑崙の遺著『七経孟子攷文』の校訂を行った際、その手伝いをしています。

寛延元年（1748年）以降は松江藩に仕え、江戸藩邸で世子の教育を担当しました。明和3年（1766年）には、世子教育のあるべき姿を論じた『輔儲論』を著しています。その他の著書としては、『聖教類語和解』、『社倉考』、『事務談』などが知られています。また、門人には海保青陵がいます。

灊水には息子がいましたが、学問の才能に恵まれなかったため、一時的に片山兼山を養子に迎えました。しかし、兼山が徂徠の学説を批判したため、養子縁組を解消し、改めて甥を養子に迎えました（片山兼山は後に折衷学派の祖の一人となりました）。

安永5年（1776年）に67歳で亡くなり、墓所は東京都新宿区の戒行寺にあります。

参考文献

市古貞次 他編『国書人名辞典 1』（岩波書店、1993年） ISBN 978-4-000-80081-5
石山洋 他編『江戸文人辞典 国学者・漢学者・洋学者』（東京堂出版、1996年） ISBN 978-4-490-10427-1

関連項目

* 中村国香

もう一度検索