宇野重昭

宇野重昭（うのしげあき、1930年 10月28日 - 2017年 4月1日）は、日本の政治学者で、中国現代政治史、北東アジア地域政策を専門としていました。東京大学で社会学博士号を取得後、成蹊大学教授、島根県立大学学長などを歴任し、教育・研究活動に尽力しました。

経歴

宇野は1930年に生まれ、福島県立白河中学校、松江高等学校を経て、1953年に東京大学教養学部教養学科を卒業しました。その後、同大学院社会科学研究科に進み、1956年に国際関係論修士課程を修了、1960年には博士課程を単位取得満期退学しました。

1961年から1964年まで外務省に勤務した後、1964年に成蹊大学政治経済学部助教授に就任。1968年には法学部教授となり、1986年から1988年には日本国際政治学会理事長、1988年から1990年には成蹊大学法学部長を務めました。1994年から2000年には日本学術会議会員、1995年から1998年には成蹊大学学長、1998年から2000年には学校法人成蹊学園専務理事を歴任しました。1999年には成蹊大学名誉教授の称号を得ています。

2000年には島根県立大学初代学長に就任し、2007年まで務めました。その後、公立大学法人島根県立大学理事長・学長を経て、2009年には島根県立大学名誉学長・名誉教授となりました。

研究活動

宇野の研究活動は、太平洋戦争、中国共産党史・毛沢東研究、内発的発展論、そして北東アジア学と、多岐にわたります。

太平洋戦争

東京大学大学院時代から、植田捷雄のもとで、坂野正高、衛藤瀋吉、関寛治らとともに太平洋戦争の実証研究に取り組みました。当時公開されたばかりの公文書や中国関係の資料を徹底的に考証し、従来の解釈を再検討しました。この研究は、1962年から1963年にかけて『太平洋戦争への道』として刊行され、歴史研究における重要な業績となりました。

中国共産党史・毛沢東研究

1950年代半ばから1960年代にかけて、宇野は中国共産党史の資料発掘にも取り組み、日本国際問題研究所と共に10巻以上の資料集を編集しました。中国共産党史を中国史全体の中で位置づけるという独自の解釈を展開し、また、毛沢東については、原資料に基づき、彼の思想形成の過程を分析しました。この研究を通じて、宇野は近代ヨーロッパに対抗するための文化革命・武装闘争を成し遂げた毛沢東を評価しました。

内発的発展論

1960年代後半には、鶴見和子らとともに水俣病の公害問題の研究に参加し、そこから内発的発展論の研究を始めました。文字化された資料だけでなく、文字化される以前の事実、実体を徹底的に検討し、「伝統は解釈によって発掘される」という視点を提示しました。伝統が新しい外来の刺激によってどのように展開するかを研究し、国際政治学に社会学的な視点を導入しました。

内発的発展論は、高度成長経済や国家中心の政治に対する異議申し立てであり、その価値を明確に示すものです。この研究は、中国社会学の基礎を築いた費孝通や朱通華らとの共同研究へと発展し、1994年に『内発的発展と外向型発展現代中国における交錯』として発表されました。

北東アジア学

2000年に島根県立大学を創設した際、宇野は北東アジア学という新しい学問分野を提唱しました。この分野では、内発的発展論の考え方を基礎に、「それぞれの文化が相互に影響し合うことで、新しい普遍的なものが生まれる」という相互触発論を展開しました。

平野健一郎は、宇野の著作『北東アジア学への道』について、科学主義が排除しようとする「情念」を地域研究の基本的な尺度として重視し、理性と情念の相互関係を重視する知性の必要性を説いていると評価しました。また、北東アジアという地域を動的な概念として捉え、地域に住む人々の主体的な意識によって変化すると論じました。

受賞・栄典

2009年に、長年の教育・研究活動が評価され、瑞宝中綬章を受章しました。

家族

夫人の宇野美恵子は教育学者で、フェリス女学院大学名誉教授です。息子の宇野重規は政治学者で、東京大学社会科学研究所教授を務めています。

著書

宇野は、数多くの著書を執筆しました。

単著には、『毛沢東』、『中国共産党史序説』、『中国と国際関係』、『地域に生きる大学』、『北東アジア学への道』などがあります。

共著には、『太平洋戦争への道』、『現代中国の歴史』などがあります。

編著には、『深まる侵略屈折する抵抗』、『北東アジア研究と開発研究』などがあります。

共編著には、『岩波講座現代中国』、『講座国際政治』、『農村地域の近代化と内発的発展論』、『20世紀の中国』、『内発的発展と外向型発展』、『北東アジア地域研究序説』、『北東アジア世界の形成と展開』などがあります。

これらの著作は、宇野の幅広い研究活動と学術的な貢献を示しています。

外部リンク

宇野ゼミナール同窓会では、宇野のゼミ卒業生たちが、継続的に学習活動を行っています。

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