安中城
安中城（あんなかじょう）は、現在の群馬県安中市安中に位置した、戦国時代から江戸時代にかけての日本の城です。江戸時代には安中藩の政庁が置かれました。その別名は「扇城（おうぎじょう）」と伝えられますが、これは本丸を扇の要に見立て、他の曲輪が東西南の三方に扇のように広がる構造に由来するとされています。
城の歴史は戦国時代に始まります。近世に編纂された歴史書によれば、永禄2年（1559年）4月、それまで原市の榎下城を拠点としていた安中左近忠成が、窪庭図書がいた野尻の地に移り、地名を安中に改めて城を築いたのが始まりとされています。しかし、同時代に書かれた史料としては、弘治2年（1556年）11月付の足利義氏による感状の写しに安中城に関する記述が見られるのが最も古い例とされています。また、永禄年間の史料からは、安中氏の当主として越前守重繁や左近大夫景繁といった人物の活動が確認できます。
安中氏は永禄4年（1561年）の時点では越後の上杉謙信に属していたと見られますが、永禄6年（1563年）2月には甲斐の武田信玄の勢力下に入ったようです。武田信玄が安中に攻め寄せたのは永禄5年（1562年）のことで、同年5月時点では攻略に至っていませんでしたが、9月頃には安中氏が武田氏に服属したと考えられています。越前守重繁は武田氏への服属後も存命でしたが、家督を子の景繁に譲って隠居したと見られています。
武田氏のもとで安中氏は安中城主の地位を保ちましたが、安中景繁は天正3年（1575年）の長篠の戦いで討死し、七郎三郎が家督を継ぎました。天正10年（1582年）3月、織田・徳川連合軍による武田領への侵攻（甲州征伐）により武田氏が滅亡すると、上野国は織田信長の家臣である滝川一益に与えられ、安中左近（七郎三郎）も一益に服属しました。
同年6月、本能寺の変が起こり織田信長が横死すると、滝川一益は神流川の戦いで北条氏邦に敗れ、上野国は北条氏の支配下に置かれました。北条氏邦は安中を伝馬宿の一つに定め、交通網の一部として整備しました。
天正18年（1590年）4月、豊臣秀吉による小田原征伐が始まると、松井田城が落城し、上野国内の諸城も次々と豊臣軍に降伏しました。この際、安中城主であった安中氏の当主（七郎三郎と考えられます）は小田原城を脱出して秀吉に降ったと伝えられています。
同年、豊臣政権によって関東地方を与えられた徳川家康が入封しました。江戸時代に入ると、慶長19年（1614年）に井伊直孝が安中に封じられ、安中藩が立藩されました。井伊氏は荒廃していた安中城の修築や城下町の整備を行います。井伊氏が2代続いた後、水野氏、堀田氏、板倉氏、内藤氏と藩主家が替わり、再び板倉氏が6代にわたって藩主を務めました。歴代藩主の中には、幕府の要職である老中を務めた堀田正俊や板倉勝清のような著名な人物もいました。安中藩は幕末まで板倉氏が治め、明治維新を迎えます。
安中城は、明治維新後の明治5年（1872年）から明治7年（1874年）にかけて解体されたと見られています。具体的な解体時期の記録にはばらつきがありますが、明治5年の段階で取り壊しが決定されていたと考えられています。
城の構造について見ると、戦国時代の中世安中城は、九十九川の河岸段丘上に築かれた東西約900メートル、南北約400メートルに及ぶ広大な平山城でした。現在の安中市文化センターがある場所に位置した本丸は、約170メートル×110メートルの規模を持ち、北側は崖に面していましたが、他の三方には空堀が巡らされていました。本丸北西にあった櫓台（烽火台と伝えられます）は、安中バイパス建設によって失われています。
江戸時代の近世安中城は、大きく分けて本丸、二の丸、そして家臣の住居エリアから構成されていました。現在の安中市文化センターや安中小学校校舎の敷地にあたる本丸には藩主の御殿が置かれ、小学校校庭の南部分にあたる二の丸には複数の蔵がありました。城への出入り口は三箇所にあり、現在の旧碓氷郡役所の前にあった町口門は城下町の安中宿へと通じていました。この町口門から西門（妙光院手前）へと続く道は、現在も群馬県道として残り、「大名小路」と呼ばれています。この大名小路沿いには、安中藩の郡奉行役宅や武家長屋が復元され、当時の様子を伝えています。近世安中城には天守閣がなく、御殿も茅葺であったことから、陣屋のような性格を持つ城郭であったと言えます。
安中城の遺構としては、専門家による詳細な検証は待たれますが、いくつかの構造物が現存しています。市内にある熊野神社には城門と伝えられるものが一棟、また市内の民家にも合計二棟の城門、そして一棟の武器庫が残されていると伝えられています。
また、安中城には城下へ時を知らせるための太鼓櫓が大手門の東、町口門から北に進んだ場所にありました。ここで打ち鳴らされていた太鼓は、現在「安中様の大太鼓」として安中市の重要文化財に指定されており、城下町の歴史を今に伝えています。
城の歴史は戦国時代に始まります。近世に編纂された歴史書によれば、永禄2年（1559年）4月、それまで原市の榎下城を拠点としていた安中左近忠成が、窪庭図書がいた野尻の地に移り、地名を安中に改めて城を築いたのが始まりとされています。しかし、同時代に書かれた史料としては、弘治2年（1556年）11月付の足利義氏による感状の写しに安中城に関する記述が見られるのが最も古い例とされています。また、永禄年間の史料からは、安中氏の当主として越前守重繁や左近大夫景繁といった人物の活動が確認できます。
安中氏は永禄4年（1561年）の時点では越後の上杉謙信に属していたと見られますが、永禄6年（1563年）2月には甲斐の武田信玄の勢力下に入ったようです。武田信玄が安中に攻め寄せたのは永禄5年（1562年）のことで、同年5月時点では攻略に至っていませんでしたが、9月頃には安中氏が武田氏に服属したと考えられています。越前守重繁は武田氏への服属後も存命でしたが、家督を子の景繁に譲って隠居したと見られています。
武田氏のもとで安中氏は安中城主の地位を保ちましたが、安中景繁は天正3年（1575年）の長篠の戦いで討死し、七郎三郎が家督を継ぎました。天正10年（1582年）3月、織田・徳川連合軍による武田領への侵攻（甲州征伐）により武田氏が滅亡すると、上野国は織田信長の家臣である滝川一益に与えられ、安中左近（七郎三郎）も一益に服属しました。
同年6月、本能寺の変が起こり織田信長が横死すると、滝川一益は神流川の戦いで北条氏邦に敗れ、上野国は北条氏の支配下に置かれました。北条氏邦は安中を伝馬宿の一つに定め、交通網の一部として整備しました。
天正18年（1590年）4月、豊臣秀吉による小田原征伐が始まると、松井田城が落城し、上野国内の諸城も次々と豊臣軍に降伏しました。この際、安中城主であった安中氏の当主（七郎三郎と考えられます）は小田原城を脱出して秀吉に降ったと伝えられています。
同年、豊臣政権によって関東地方を与えられた徳川家康が入封しました。江戸時代に入ると、慶長19年（1614年）に井伊直孝が安中に封じられ、安中藩が立藩されました。井伊氏は荒廃していた安中城の修築や城下町の整備を行います。井伊氏が2代続いた後、水野氏、堀田氏、板倉氏、内藤氏と藩主家が替わり、再び板倉氏が6代にわたって藩主を務めました。歴代藩主の中には、幕府の要職である老中を務めた堀田正俊や板倉勝清のような著名な人物もいました。安中藩は幕末まで板倉氏が治め、明治維新を迎えます。
安中城は、明治維新後の明治5年（1872年）から明治7年（1874年）にかけて解体されたと見られています。具体的な解体時期の記録にはばらつきがありますが、明治5年の段階で取り壊しが決定されていたと考えられています。
城の構造について見ると、戦国時代の中世安中城は、九十九川の河岸段丘上に築かれた東西約900メートル、南北約400メートルに及ぶ広大な平山城でした。現在の安中市文化センターがある場所に位置した本丸は、約170メートル×110メートルの規模を持ち、北側は崖に面していましたが、他の三方には空堀が巡らされていました。本丸北西にあった櫓台（烽火台と伝えられます）は、安中バイパス建設によって失われています。
江戸時代の近世安中城は、大きく分けて本丸、二の丸、そして家臣の住居エリアから構成されていました。現在の安中市文化センターや安中小学校校舎の敷地にあたる本丸には藩主の御殿が置かれ、小学校校庭の南部分にあたる二の丸には複数の蔵がありました。城への出入り口は三箇所にあり、現在の旧碓氷郡役所の前にあった町口門は城下町の安中宿へと通じていました。この町口門から西門（妙光院手前）へと続く道は、現在も群馬県道として残り、「大名小路」と呼ばれています。この大名小路沿いには、安中藩の郡奉行役宅や武家長屋が復元され、当時の様子を伝えています。近世安中城には天守閣がなく、御殿も茅葺であったことから、陣屋のような性格を持つ城郭であったと言えます。
安中城の遺構としては、専門家による詳細な検証は待たれますが、いくつかの構造物が現存しています。市内にある熊野神社には城門と伝えられるものが一棟、また市内の民家にも合計二棟の城門、そして一棟の武器庫が残されていると伝えられています。
また、安中城には城下へ時を知らせるための太鼓櫓が大手門の東、町口門から北に進んだ場所にありました。ここで打ち鳴らされていた太鼓は、現在「安中様の大太鼓」として安中市の重要文化財に指定されており、城下町の歴史を今に伝えています。
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