安別駅

安別駅

北海道の北部、枝幸郡浜頓別町字安別にかつて存在した、日本国有鉄道（国鉄）および北海道旅客鉄道（JR北海道）天北線の鉄道駅、安別駅（やすべつえき）についての記事です。天北線の廃止に伴い、1989年（平成元年）5月1日をもって営業を終了しました。

歴史

安別駅の起源は、1956年（昭和31年）11月19日に国鉄北見線に設けられた安別仮乗降場（局設定）に遡ります。これは、正式な駅ではなく、鉄道管理局の判断によって設置された乗降のための仮の施設でした。その後、1961年（昭和36年）4月1日に北見線が天北線と改称された際にも、引き続き同線の仮乗降場として扱われました。

仮乗降場時代には、不慮の事故に見舞われたこともあります。1980年（昭和55年）5月19日、近隣の民家で発生した火災が拡大し、鉄道用地内にまで延焼しました。これにより、安別仮乗降場の施設そのものに加え、周囲に植えられていた約18.9ヘクタールもの広大な防雪林が全焼するという大きな被害を受けました。この影響で、普通列車6本が運休する事態となりました。

国鉄の分割民営化という歴史的な転換点を迎えた1987年（昭和62年）4月1日、安別仮乗降場はJR北海道に承継されました。この移管と同時に、仮乗降場から正式な「駅」へと昇格を果たし、「安別駅」となりました。しかし、駅としての期間はわずか2年あまりと短いものでした。天北線が特定地方交通線に指定され、廃止の対象となったためです。そして、天北線の全線廃止に伴う最終営業日となった1989年（平成元年）4月30日の翌日、5月1日をもって、安別駅はその歴史に静かに幕を閉じました。

駅名の由来

駅名は、その所在地である「安別」という地名に由来しています。この地名はアイヌ語に由来すると考えられており、語源についてはいくつかの説があります。一つには、「網を使う・川」を意味するアイヌ語の「ヤㇲペッ（yas-pet）」が挙げられます。また、「網を・いつも使う・川」という意味を持つとされる「ヤウㇱペッ」が転訛したものとする説も存在します。いずれの説も、この地の川での漁労が盛んであったことを示唆しているのかもしれません。

駅構造

廃止された時点の安別駅は、単式ホーム1面のみを持つ、線路1本のシンプルな地上駅でした。ホームは線路の西側に設置されており、南稚内方面に向かって列車が進む際に、進行方向左手に見える位置でした。仮乗降場として開設された経緯から、しっかりとした駅舎は設けられず、代わりにブロック造りの簡素な待合所が設置されただけの無人駅でした。旅客が風雨をしのぎ、列車を待つための最低限の設備が備えられていた形態です。

駅周辺

駅周辺には、目立った集落はなく、広大な牧草地や未開の原野が広がっていました。生活関連施設は少なく、自然が豊かな環境でした。付近を通る主要な道路としては、北海道道710号浅茅野台地浜頓別線や、オホーツク海沿岸を南北に走る国道238号（オホーツクライン）があります。また、この地域にはポン沼があり、冬場には結氷した湖面を利用した帆かけスキーが行われるなど、自然を生かしたレクリエーションも盛んな場所でした。駅跡の近くには、現在も宗谷バスの「安別」停留所が設置されており、地域住民の交通手段として機能しています。

駅跡

天北線が廃止された後、線路跡の一部は他の用途に転用されています。特に、浜頓別駅跡から猿払駅跡にかけての区間は、「北オホーツクサイクリングロード」として整備され、自転車道として多くの人々に利用されています。安別駅の跡地付近も、このサイクリングロードの一部となっています。

駅の痕跡としては、2001年（平成13年）の時点で、かつての待合所と通信中継室の建物がサイクリングロード沿いに残されていることが確認されています。待合所については、サイクリングロードの利用者のための休憩所として再活用されており、建物には「休けい所・便所」と表示されていました。この待合所と通信中継室は、その後2010年（平成22年）や2011年（平成23年）時点でも同様に残存しており、廃駅となった後も、かつての鉄道施設が地域や訪問者の利便のために役立てられていたことが分かります。

隣の駅（天北線）

山軽駅 - 安別駅 - 飛行場前駅

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