安宅 (能)

能楽『安宅』の概要

概要

『安宅』（あたか）は、日本の能楽の一作品で、主に『義経記』などの史実に基づいています。成立時期は室町時代で、作者は明確ではありませんが、小次郎信光説も考えられています。最古の上演記録は1465年の寛正6年であり、信光の年齢を考慮すると彼が本作を執筆することは不自然とされています。

物語の背景

本作は、「如意の渡し」での出来事から発展します。義経とその部下たちが奥州に逃れる途中、安宅の関で関守の富樫に阻まれます。この場面で、弁慶が巧妙に「勧進帳」を朗読して彼らを救い出すという逸話が描かれています。後世には浄瑠璃や歌舞伎などでも展開されており、義経物の代表作ともいえるでしょう。

作品の構成

作品は、山伏に変装した義経一行が安宅の関に到達するところから始まります。彼らが関所での阻止を避けるためにどうするかを相談し、弁慶は義経に荷物を背負わせるように指示します。安宅の関では、いくつかの重要なシーンが展開されます。

1. 安宅までの道行

ここでは、義経一行が山伏姿で登場し、旅の様子を謡いながら進行します。彼らは新しい関所の存在を聞き、通過の方法を探ります。弁慶は、目立たないように義経を後ろに配置し、強力の役割を果たさせます。

2. 勧進帳の読み上げ

関に到着すると、富樫が尋問を始めます。弁慶は、再建のために北陸道に使わされた山伏だと主張し、山伏の由来を語ります。その後、富樫から勧進帳の朗読を要求され、弁慶は巧みに虚構の勧進帳を読み上げます。

3. 義経打擲

富樫が義経を怪しむ中、弁慶は義経を杖で打つことで疑念を晴らす場面が展開されます。この瞬間、彼の行動は関を通過するための計略となります。

4. 難を逃れた主従の対話

通過後、弁慶は義経に対して謝罪し、義経は彼の機転を称賛します。この対話には、忠義や運命に対する二人の感慨深い思いが込められています。

5. 富樫が追ってきて酒宴になる

再び安宅の関に戻ると、富樫が義経一行に謝罪の酒を贈りたいと伝えます。弁慶は警戒しつつも、富樫の酒宴に参加することになります。ここでの酒を用いた演出が、彼らの逃避行の後を彩ります。

登場人物

• - シテ: 武蔵坊弁慶
• - ワキ: 富樫
• - 子方: 源義経
• - オモアイ: 義経の供をする強力
• - アドアイ: 富樫の太刀持ち
• - ツレ: 義経の家来たち

後世への影響

能楽『安宅』は、その後、歌舞伎や浄瑠璃など多くの形で受け継がれ、広がりを見せました。特に、歌舞伎の『勧進帳』や講談の『安宅の勧進帳』などは、この作品の人気を反映しています。

まとめ

『安宅』は、義経の運命と忠義、仲間との絆が描かれた作品であり、その魅力的なストーリーと情緒豊かな表現が後世にわたって語り継がれています。

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