安川悦子

安川悦子（やすかわ えつこ）は、1936年10月生まれの日本の思想史・女性学者であり、名古屋市立大学の名誉教授です。彼女の専門分野は社会思想史とジェンダー論であり、特にイギリス労働運動やフェミニズムの視点から社会における様々な問題について研究しています。また、教育者として後進の育成にも尽力しました。

生い立ちと学歴

安川悦子は横浜市で生まれ、1959年に名古屋大学経済学部を卒業しました。その後、同大学大学院経済学研究科に進学し、1964年に博士課程を単位取得満期退学しています。大学院修了後は、名古屋大学で助手として勤務し、研究者としてのキャリアをスタートさせました。

研究活動

1965年、安川は名古屋市立女子短期大学の講師に就任し、1968年には助教授に昇進しました。1974年から1975年にかけてはロンドン大学に留学し、歴史家のエリック・ホブズボームに師事しました。この留学経験は、安川の研究に大きな影響を与え、彼女の社会思想史研究を深めるきっかけとなりました。

1975年に名古屋市立女子短期大学教授に就任し、1982年には「イギリス労働運動と社会主義」の研究で名古屋大学から経済学博士の学位を取得しました。この研究は、その年の労働関係図書優秀賞を受賞するなど、高い評価を受けています。1995年には名古屋市立大学の学長に就任し、教育行政にも携わりました。

1996年、名古屋市立大学人文社会学部の教授となり、2002年に退任しました。その後、福山市立女子短期大学の学長を務め、2010年に退任しています。

主な著書

安川悦子は、数多くの著作を執筆しています。代表的な著書として、以下のものがあります。

『イギリス労働運動と社会主義 「社会主義の復活」とその時代の思想史的研究』（御茶の水書房、1982年）
『アイルランド問題と社会主義 イギリスにおける「社会主義の復活」とその時代の思想史的研究』（御茶の水書房、1993年）
『フェミニズムの社会思想史』（明石書店、2000年）

これらの著作は、彼女の専門とする社会思想史やジェンダー論における重要な貢献となっています。

共著・翻訳

安川悦子は、単著の他に、多くの共著や翻訳も手がけています。特に、夫である安川寿之輔との共著『民主主義と差別のダイナミズム』、『女性差別の社会思想史』は、ジェンダー問題における重要な研究として知られています。また、エリック・ホブズボームの著作の翻訳も多数手がけており、日本の読者に海外の社会思想を紹介する上で大きな役割を果たしました。

共著
『民主主義と差別のダイナミズム 女性差別の社会思想史』（安川寿之輔共著、明石書店、1987年）
『消費する社会と消費される生活』（ユニテ、1990年）
『女性差別の社会思想史』（安川寿之輔共著、明石書店、1993年）
『「高齢者神話」の打破 現代エイジング研究の射程』（竹島伸生共編著、御茶の水書房、2002年）
『地域の力・地域の文化 多元都市「福山」の可能性』（藤井輝明、西川龍也共編著、児島書店、2010年）

翻訳
『労働擁護論』（ホジスキン著、河出書房新社、1966年）
『市民革命と産業革命 二重革命の時代』（E.J.ホブズボーム著、岩波書店、1968年）
『イギリス民衆教育論』（浜林正夫共訳編、明治図書出版、1970年）
『素朴な反逆者たち 思想の社会史』（E.J.ホブズボーム著、社会思想社、1989年）
『現代フェミニズムと労働 女性労働と差別』（ヴェロニカ・ビーチ著、中央大学出版部、1993年）
『フェミニズム歴史事典』（ジャネット・K.ボールズ,ダイアン・ロング・ホーヴェラー編著、明石書店、2000年）
* 『フェミニズムの歴史と女性の未来 後戻りさせない』（エステル・フリードマン著、明石書店、2005年）

安川悦子の研究は、社会思想史、ジェンダー論、労働運動史といった多岐にわたる分野に大きな影響を与え、現代社会における様々な問題について深く考える上で重要な示唆を与えています。

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