安藤信友

安藤信友について

安藤信友は、江戸時代前期から中期にかけて活躍した大名であり、備中国松山藩の2代目藩主、そして美濃国加納藩の初代藩主を務めました。官位は従四位下・対馬守、侍従を授けられ、対馬守系安藤家の4代目として、6万5000石を領しました。享保7年（1722年）には徳川吉宗の治世下で老中に任ぜられ、幕政にも深く関わりました。

文化人としての側面も持ち、特に俳諧では「冠里（かんり）」の号で知られ、宝井其角の門下として名を馳せました。また、茶道においては御家流を創始し、その流儀は今日まで伝えられています。

生涯

安藤信友は、安藤重博の長男として生まれました。天和元年（1681年）には11歳で5代将軍・徳川綱吉に初めて拝謁しました。貞享2年（1686年）には長門守に叙任され、元禄11年（1698年）には父の死去に伴い、備中松山藩6万5000石の家督を継ぎました。

宝永元年（1704年）には奏者番となり、宝永6年（1709年）には寺社奉行を兼任しました。宝永8年（1711年）には美濃加納（美濃国内に6万石、近江国内に5000石の計6万5000石）に転封されます。正徳3年（1713年）に寺社奉行を辞任しますが、享保2年（1717年）には再び寺社奉行に任ぜられ、翌年には大坂城代に、そして享保7年（1722年）には8代将軍・徳川吉宗によって老中に任じられ、享保の改革を推進する一翼を担いました。

後継者に関しては、長男の松千代と次男の信易が早世したため、父の従兄弟にあたる信周を養子に迎えました。しかし、その信周も信友に先立って亡くなったため、信周の長男である信尹を改めて後継者としました。享保17年（1732年）に病に倒れ、62歳でその生涯を終えました。

墓所は、曾祖父・安藤重長が中興開基した江戸麹町の栖岸院（現在は杉並区永福に移転）にあります。法名は賢誉濬哲龍徳院です。

官歴と幕府での職歴

安藤信友は、以下のような官歴を歩みました。

貞享2年12月28日（1686年1月22日）：従五位下・長門守
宝永6年（1709年）11月13日：右京進
正徳元年（1711年）11月11日：右京亮
享保3年（1718年）8月4日：従四位下
享保3年（1718年）8月8日：対馬守
享保7年12月15日（1723年1月21日）：侍従

また、幕府においては以下の職を歴任しました。

宝永元年（1704年）10月9日：奏者番
宝永6年（1709年）11月23日：奏者番 兼 寺社奉行
正徳3年（1713年）3月12日：奏者番
享保2年（1717年）10月5日：奏者番 兼 寺社奉行
享保3年（1718年）8月4日：大坂城代
享保7年（1722年）5月21日：老中

文化人としての側面

俳諧・発句

安藤信友は、俳諧においては宝井其角に師事し、「冠里」の号で知られました。水間沾徳などの俳人とも交流があり、その句は多くの書物で紹介されています。

有名な句として、雪の日に駕籠で江戸城へ向かう途中、薄着で素足の酒屋の丁稚小僧が御用聞きをしているのを見て詠んだ

雪の日や あれも人の子 樽拾ひ

があります。この句は、丁稚も同じ人間でありながら、寒空の下で辛い仕事をしている姿を憐れむ気持ちが込められています。

また、信友が藩主を務めていた備中国松山藩内では、俳諧が盛んに行われていました。

同門の俳人・秋色は、冠里の家に招かれた際に

武士の紅葉にこりず女とは

という句を詠んでいます。

茶道

安藤信友は、初めは織部流を学んでいましたが、後に米津田盛の次男・田賢の門人となり、千利休から細川三斎、一尾伊織、田賢へと伝授されたとされる三斎流（一尾流）を学びました。その後、三斎流を基本としつつ織部流の要素を取り入れ、独自の流儀を確立させました。これが安藤家で「御家流」として代々伝えられ、現在に至っています。

系譜

父母
父：安藤重博
母：松平光重の娘
正室
牧野忠成の娘
子女
長男：安藤松千代
次男：安藤信易
養子・養女
養子：安藤信周（安藤重常の次男）
養子：安藤信尹（安藤信周の長男）
養女：安藤信周正室（長島端得の娘）
養女：常子（大久保忠胤正室、京極高或の娘）
養女：藤堂高朗正室（安藤信周の娘）

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