宗懍

宗懍（そう りん）の生涯と業績

宗懍は中国の南北朝時代に生きた著名な人物であり、『荊楚歳時記』の著者として広く知られています。彼の本名は宗懍で、字は元懍です。出身地は南陽郡涅陽県にあたります。

経歴の始まり

南朝梁の山陰県令である宗高之の子として誕生した宗懍は、若い頃から優れた学び手としての才能を発揮しました。彼は読書を好み、古典の教訓を引用することで周囲から小児学士と称されていました。普通6年（525年）には秀才として認められ、その後、湘東王蕭繹のもとに呼ばれることになります。

初めのうちは記室に勤務することとなり、特に「龍川廟碑」の原稿を一夜で仕上げ、翌朝には蕭繹に披露して称賛を受けました。大同6年（540年）には、蕭繹が江州に移ることに伴い、宗懍も刑獄参軍としてその下での職務に就きました。その後、臨汝県・建成県・広晋県の県令を歴任しますが、母の死に際して服喪のために職を辞します。

政治的役割と家族の影響

蕭繹が再び荊州刺史に就任した際、宗懍は別駕として江陵県令を務めることになりました。元帝（蕭繹）が即位するや、彼は尚書侍郎に抜擢され、信安県侯に封じられました。その後も吏部郎中や五兵尚書などの高位に昇進し、様々な政治的責任を果たしました。特に、侯景の乱後の動乱期において、元帝が都を建康に戻す提案をした際、宗懍は唯一楚地に都を置くことを主張したのです。この発言の背景には、彼の故郷が荊州であったことが影響していたと考えられています。

西魏への降伏と後年の業績

恭帝元年（554年）、西魏の攻撃によって江陵が陥落すると、宗懍は王褒と共に西魏に降伏し、関中に移住しました。宇文泰は宗懍を名士として厚遇し、その後も北周の孝閔帝の時代には車騎大将軍・儀同三司の位を賜ります。明帝の元年には、王褒らと共に麟趾殿で古典書物の校正作業に従事しました。彼の文集は20巻に及び、当時の文人たちにしっかりと受け入れられました。

宗懍の逸話

宗懍の人生には感動的な逸話もあります。母の死を悼むあまり、彼は哀しみから血を吐き、その後20日間で三度も息を引き取り、再び蘇生したと伝えられています。また、彼の哭声には数千の鳥が集まり、彼が泣きやむと共に去るという伝説も残されています。

彼は保定年間に亡くなり、享年は64歳でした。宗懍はその生涯を通じて文学の発展と政治の実務に貢献し、今なおその名は語り継がれています。

伝記資料

宗懍に関する資料は、主に『周書』、『梁書』、そして『北史』に記されています。これらの書物は彼の業績を知るうえで重要な資料となっています。

もう一度検索