宗武志

宗武志の生涯

宗武志（そう たけゆき）は、1908年（明治41年）2月16日に東京で生まれ、1985年（昭和60年）4月22日に亡くなった、日本の英語学者、詩人、そして華族です。伯爵の爵位を持ち、麗澤大学名誉教授、李王家徳恵翁主の夫としても知られています。旧姓は黒田で、宗氏第37代当主でもありました。

生い立ちと教育

武志は、父・黒田和志（対馬府中藩藩主宗義和の六男）と母・鏻子（黒田直和の娘）の末子として生まれました。黒田家は上総久留里藩の旧藩主の家柄です。父は貴族院議員を務めていました。幼少期は東京で過ごし、四谷第一尋常小学校から全寮制の日本済美学校に進学しました。1917年に父親が亡くなった後、1918年に父の故郷である対馬へ移り、厳原尋常高等小学校に転校。1920年には対馬中学校に入学しました。在学中の1923年、伯父の重望が死去し、後継者がいなかったため、同年10月に宗家の家督を継ぎ、第37代当主となりました。

1925年に対馬中学校を卒業し東京に戻ると、学習院高等科に入学。在学中は北原白秋に師事し、詩作の才能を磨きました。1928年には東京帝国大学文学部英文科に進学し、市河三喜や斎藤勇といった著名な学者から指導を受け、1931年に卒業しました。

研究者としての活動

大学卒業後、武志は廣池千九郎の道徳科学の講義に参加し、1935年に道徳科学専攻塾の開設に伴い講師として迎えられました。道徳科学の講義を担当する傍ら、東京大学大学院に進学し、市河三喜のもとで現代英語の研究に励み、1939年に修了しました。1940年に道徳科学専攻塾の講師を辞任した後は、自宅で英会話、ラテン語、ギリシア語、イタリア語などを学びました。

1944年には内閣情報局事務嘱託として戦時資料の英和翻訳に従事し、1945年には二等兵として召集されました。戦後、1946年に貴族院議員に選出されましたが、1947年の日本国憲法施行に伴い爵位を喪失しました。

その後、麗澤大学で教鞭をとり、外国語学部長や学監を歴任し、1978年には名誉教授となりました。また、学校法人廣池学園の理事や常務理事も務め、教育活動に尽力しました。生涯を通じて詩作と絵画を愛し、1975年には詩誌『詩田』を創刊。麗澤大学の校歌の作詞も手がけました。麗澤大学のある光ケ丘という地名は、武志が新渡戸稲造の言葉にちなんで命名したものです。

1978年には対馬の宗家文庫を長崎県立対馬歴史民俗資料館に永久寄託しました。この際、「文庫の資料は対馬のものだが、県にやるのではない」と述べ、資料に対する深い愛着を示しました。自身が描いた油絵も同資料館に寄贈し、1983年には同資料館の開館5周年記念式典で講演を行いました。宗家文書は約8万点が同資料館に所蔵されています。

私生活

1931年、朝鮮王朝の王女である徳恵翁主と結婚しました。しかし、徳恵翁主は精神的な病を抱えており、結婚生活は困難を極めました。1955年に離婚した後、日本人女性と再婚しました。韓国では、武志が政略結婚であったことや、徳恵翁主を精神病院に入院させたことなどから批判的な見方が存在します。

再婚後は、千葉県柏市の廣池学園の教員宿舎に移り住み、新たな家庭を築きました。子どもたちもそれぞれの分野で活躍しています。

結婚奉祝記念碑

徳恵翁主との結婚を祝して、対馬に記念碑が建てられましたが、後に武志の希望で撤去されました。しかし、日韓交流を促進する目的で、2001年に新たな記念碑が建立されました。

著書

宗武志は、詩集や紀行文など、多くの著作を残しました。

『対馬民謡集』（1934年）
『海郷』（1956年）
『紀行110日』（1964年）
『春庭楽』（1978年）
『日の雫』（1978年）
『黒潮─宗武志歌集』（1985年）

宗武志の遺産

宗武志は、英語学者、詩人、教育者としてだけでなく、対馬の歴史や文化を後世に伝える活動にも尽力しました。彼の生涯は、激動の時代を生き抜いた一人の知識人の軌跡として、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

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