定山渓天狗岳

天狗岳：険しい峰と道迷いの歴史を持つ札幌の秀峰

北海道札幌市南区定山渓に位置する天狗岳は、標高1144.5メートルを誇る山です。北海道百名山、北海道の百名山、そして札幌50峰にも選定されており、その雄大な姿は多くの登山者を魅了しています。定山渓温泉からは北西の方角に、小天狗岳を隔ててその威容を現します。

天狗岳という名前の由来

地形図には「天狗山」と記載されていますが、一般的には「天狗岳」と呼ばれ親しまれています。特に定山渓にあることから「定山渓天狗岳」、略して「定天」と呼ばれることも多いです。その名前の由来は諸説あり、3つの険しい岩峰が連なるその姿から、あるいは天狗の腰掛けに似ていることから名付けられたという説があります。

一方、アイヌ語では「キトウシュヌプリ」と呼ばれていました。これは「ギョウジャニンニクが群生する山」という意味です。「スマヌプリ」という呼び名も存在し、これは「岩山」を意味しています。これらの名称からも、古くから人々に親しまれ、特徴的な地形が認識されていたことがわかります。

登山道の歴史と現状

豊羽鉱山が現役だった時代、そして自家用車が普及する以前は、天狗岳へのアクセスは比較的容易でした。北海道道95号京極定山渓線沿いのバス停「天狗岳登山口」から、白井川にかかる吊り橋を渡れば登山口に着くことができました。しかし、この吊り橋は老朽化のため撤去され、現在は上流の白井二股に架かる橋を渡り、川沿いの道を東へ戻るルートが主流となっています。

登山道は、東尾根コースと熊ノ沢コースの2つがありましたが、東尾根コースは現在では廃道となっています。現在利用されている熊ノ沢コースは、急な岩壁や、落石、滑落の危険性を伴う箇所があるため、注意が必要です。2017年には、ルート外の斜面を登った登山者が滑落事故で亡くなるという痛ましい出来事も発生しています。

道迷い多発と対策

2022年の登山アプリ「ヤマップ」のデータによると、天狗岳は北海道内で道迷いが最も多く発生した山の一つでした。特に、正しいルートが「5メートルほど斜面を登った後にすぐ下る」という地点では、道に迷う人が多く、登山者の7人に1人がルートを外れていたという分析結果が出ています。

この問題を受けて、石狩森林管理署は2022年8月下旬に道迷い多発地点に案内板や誘導ロープを設置しました。アプリ上のデータによれば、この対策後、道迷いの発生件数は減少しているとのことです。

まとめ

天狗岳は、その険しい地形と豊かな自然、そして歴史的な背景を持つ魅力的な山です。登山を楽しむ際には、最新の登山情報を入手し、安全に配慮した行動を心がけることが重要です。近年は道迷い対策も進められていますが、依然として危険が伴う箇所もあります。事前に十分な準備と計画を立て、安全で思い出深い登山となるよう努めましょう。

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