定林寺 (土岐市)

定林寺（じょうりんじ）

定林寺は、かつて美濃国（現在の岐阜県南部）の土岐郡に存在した臨済宗の寺院です。東濃地方における最初の禅宗寺院として知られ、最盛期には七堂伽藍を備えた大寺院でした。しかし、戦火によって焼失し、現在は観音堂のみが残っています。

歴史

定林寺の創建については、いくつかの説があります。

土岐頼貞の開基説: 美濃国の守護であった土岐頼貞が開基し、佛光國師（無学祖元）を勧請開山としたという説。
佛国国師の開山説: 実際には、鎌倉の円覚寺の開山である無学祖元の高弟、佛国国師（高峰顕日）を迎えて開山したという説が有力です。佛国国師の没年が1316年であることから、それ以前の開創と考えられます。
土岐光貞の三十三回忌説: 正和2年（1313年）に、土岐頼定の父である土岐光貞の三十三回忌が定林寺で営まれた記録があり、このことから、それ以前に開創されたと考えられています。
建武年間説: 『美濃諸氏傳』には、建武年間（1334年～1335年）の創建と記されています。
土岐頼遠の建立説: 『浅野氏系譜』には、土岐頼遠が父の頼定の死後の暦応3年(1340年)に建立したとされています。

寺域は800メートル四方にも及んだとされ、現在も「あみだが池」「観音堂」「おさる堂」「上人塚」「大門」「正庵」「寺屋敷」などの地名が残っています。

永禄8年（1565年）、武田信玄の重臣である秋山虎繁と野村長門守が土岐郡に侵攻した際、定林寺は他の寺社と共に焼討に遭い、一旦廃寺となりました。この時、秋山虎繁の配下である仁木（山中）藤九郎が150騎を率いて、土岐郡の寺社を焼き討ちしたとされています。

その後、延宝5年（1677年）に、定林寺村を領地としていた岩村藩主の丹羽氏明の家臣、杉山駒之助と深見五郎左衛門らが観音堂を再建しました。このことは、観音像の銘文からも明らかです。

観音像の銘文には、

「丹羽勘助内 杉山駒之助 武運長栄のため 寄進し奉る　時 延宝五巳丁 六月二十一日」
「十一面の一尊を再興し奉る 右趣意は 吾麻君氏房公 武運長久、ならびに自己分上 子孫繁栄のため寄進し奉るものなり 濃州 恵那郡 遠山庄 岩村城下 時に 延宝五巳丁 六月二十一日 再興願主 深見五郎左衛門尉信正 大仏師 赤川市郎兵衛」

と記されています。また、この観音像には古い銘文があり、「文禄二年巳癸 小春吉辰 外護の小担那 山口源左衛門 地下門付勧進」と記されています。このことから、安土桃山時代の文禄2年（1593年）に観音堂のみが再興され、江戸時代の延宝5年（1677年）に修理されて再々興されたことがわかります。

元禄年間（1688～1704年）には、土岐郡三十三所巡礼の二番札所となりました。

昭和50年（1975年）に宗教法人となっています。

寺号の由来

寺号は、かつて江寧府（現在の中国の南京市）にあった鐘山定林寺の地勢に似ていることから名付けられました。

十刹

定林寺は、臨済宗の寺院における格付けで、鎌倉五山に次ぐ十刹の第八位に列せられた大寺院でした。暦応3年（1439年）に十刹に列せられました。

歴代住持

定林寺の歴代住持は以下の通りです。

勧請開山：佛光國師（無学祖元）
第一世：佛國國師（高峰顕日）
第二世：正覚國師（無窓疎石）
第三世：頌公妙偈
第四世：笑渓妙虎
第五世：恵江首座
第六世：善方首座
第七世：妙高首座
第八世：佛種恵済禅師（慶圓月心）
第九世：普覚圓光禅師（白崖寶生）
第十世：頌山座元
第十一世：方心圓
第十二世：景菊存中
第十三世：昌致知礼西堂
第十四世：玄徳西堂
第十五世：温中承顒西堂
第十六世：等邁西堂
第十七世：景忠西堂
第十八世：寿崇首座（寛正2年（1461年）に定林寺を復興）
第十九世：景稜西堂
第二十世：中濃西堂
第二十一世：脊桃西堂

定林寺五景

定林寺では、以下の五つを「定林寺五景」と称しました。

小室峯: 中国の嵩山にある少林寺の別峯を模して名付けられた、観音堂の裏山のこと。
曹源川: 小室峯から流れ出る沢水。
利生塔: 佛國國師（高峰顕日）の霊骨と、土岐頼貞の父である光定の遺骨を安置した場所。
普照庵: 開山の佛光國師（無学祖元）の像を祀っていた庵寺。
一滴亭: 禅の精神を象徴する言葉に由来すると思われる場所。

参考文献

『土岐市史 1 (原始時代-関ケ原合戦)』 土岐市史編纂委員会 1970年
『土岐市史 2 (江戸時代～幕末)』 土岐市史編纂委員会 1971年
『土岐津町誌　上』土岐津町誌編纂委員会　平成9年
『多治見市史 通史編 上』多治見市 1980年

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